抄録
Duchenne型筋ジストロフィー症(DMD)は, 致命的な伴性劣性の遺伝子性疾患であるが, X染色体上でのDMD遺伝子の座位は確定されておらず, その遺伝子産物も同定されていない。今回, 南九州地区の49のDMD家系について, 発端者の同胞と両親のXg血液型, 色盲およびDMDの有無を調査し, 以下の遺伝分析を行った。DMDの分離比の推定値は期待値よりはるかに小さく, 遺伝分析にあたっては浸透度を考慮した。DMDとXg血液型との間の連鎖の検定を行ったが, 有意な連鎖を検出することはできなかった。DMDと色盲との間の連鎖の検定は, 色盲の頻度が低いため行うことができなかった。DMDの突然変異率は, 1.935×10^<-4>∿2.224×10^<-4>(/locus/generation)と推定された。この値はやや過大推定と思われるが, 他のX連鎖性疾患の突然変異率に比べるとかなり高い。