抄録
付加開裂連鎖移動剤である2-(ブロモメチル)アクリル酸メチル存在下,エチレングリコールジメタクリレートのラジカル単独重合で得られる多官能ハイパーブランチポリマーは,複数のペンダントビニル基およびω-末端ビニル基を有し,無触媒下で熱硬化し高い熱安定性を示す。本研究では,安定ニトロキシドラジカル存在下でラジカル反応を行うと,炭素中心ラジカルが拡散律速に近い速度で捕捉されることに注目し,多官能ハイパーブランチポリマーの硬化反応の解析への応用を検討した。安定ニトロキシドラジカルである4- ヒドロキシ-2,2,6,6- テトラメチルピペリジン1- オキシルベンゾエート(4-HTB)存在下,多官能ハイパーブランチポリマーを加熱すると4-HTB と結合した可溶な生成物が得られたことから,熱硬化がラジカル機構で進行することを確認した。 1H NMR によるポリマーの構造解析から,α- 末端のBr-CH2 結合およびω- 末端のビニル基に隣接するC-C 結合は結合解離エネルギーが小さいもののラジカル生成に対する寄与は小さく,主にビニル基の自発重合により熱硬化が進行することを明らかにした。