杏林医学会雑誌
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ウシ血小板血管透過性因子の細胞増殖促進能についての検討
新野 史
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1989 年 20 巻 1 号 p. 43-55

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抄録
ウシ血小板血管透過性因子(VPF)を用いBalb/c 3T3細胞の細胞増殖促進能を検討した。Superose 12でウシ血小板α穎粒酸抽出液より分子量約3万,30万,45万以上のVPFの存在を再確認した。低分子量のVPFは,SDS-PAGEでの検索で,分子量3万の単一バンドを示す蛋白であることが証明された。これらVPFは,いずれも^<125>I-BSAによる定量的検索および超微形態学的検索によりウサギ背皮に対し血管透過活性をもつことが確認できた。3種類のVPFは,Balb/c 3T3細胞の細胞増殖を促進し,また,それら細胞の^3H-thymidineの取り込みを増加させた。さらに,これらVPFの細胞増殖活性は,protamine sulfateの添加により完全に阻害され,また,trypsinや2-mercaptoethanol処理により減弱されたが,100℃,10分の熱処理には安定であった。以上の事実から,VPFは,急性炎症においては液性浸出と細胞遊走に,また,慢性炎症では間葉系細胞の増殖にも重要な役割をもつことが示唆される。
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© 1989 杏林医学会
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