抄録
遺伝子組換え技術を用いて,Y染色体由来のDNAをクローン化した。得られた10種i類のY染色体特異DNA断片と既知のY染色体特異DNAプローブを併用して, Y染色体の構造異常を持つか疑われる症例に対してサザンハイブリダイゼーションを行い,Y染色体上に,これらDNA断片とプローブの位置および相互の関係を決めた。その結果,これら断片は新たにY染色体構造異常解析のプローブとして使用可能となった。本研究の結果,これまでの分染法で分析不可能な微細な構造異常が,Y染色体に特異的でかつY染色体上の位置の明らかな多数のプローブにより,DNA解析が可能となった。つまり短腕の遠位端付近から長腕(q12)の部分までY染色体をその全長にわたり精密に分析できるようになった。この完成したプローブ系列は予備的な検討であるが,性分化異常症の患者にみられた分析不可能な微小なマーカー染色体の解析に極めて有効であるとの結果が得られた。