抄録
単極性うつ病と双極性うつ病の臨床特徴の相違について検討した。対象は杏林大学医学部付属病院精神神経科に1976年から1989年までの14年間に入院したうつ病患者253例である。内訳は,単極性うつ病(内因性)205例(男子93例,女子112例),双極性うつ病48例(男子25例,女子23例)である。これら対象の性別,入院期間,初発年齢,病前性格,症状,発病の誘因,家族負因等を調査し,各々の項目について単極性(内因性)と双極性の病型別による比較検討を行った。その結果,双極性うつ病は単極性うつ病に比し家族集積性が高く,若年発症傾向が確認された。病前性格については,メランコリー好発型性格が単極性うつ病に多く,また両群ともに執着性格の比率が高かった。さらに単極性うつ病では遺伝的要因よりも強迫的な病前性格を基盤に,誘因が関与して発症に至る過程が多いのに対し,双極性の患者ではこのような過程よりも遺伝的な要因の比重が高いと考えられた。性別,入院期間については両群間に有意差を認めなかったが,単極性,双極性ともに従来の報告よりも入院期間の延長傾向がみられた。内因性症状の比較では両群間に有意差は認められなかった。