杏林医学会雑誌
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鶏胚角膜内皮の分化過程における光学および電顕的検討 : 微絨毛および繊毛の意義について
伊地知 洋
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1994 年 25 巻 4 号 p. 517-526

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抄録

胎生期角膜内皮の超微形態につき,孵卵5日目(stage 26 : Hamilton-Humburger)から18日目(以下stage 44)までの鶏胚を用いて光学顕微鏡,走査型および透過型電子顕微鏡的に検討した。光学顕微鏡的には,角膜内皮は孵卵5日目にはすでに認められたが,大小不整な細胞から成り,多数の細胞突起を有していた。孵卵6日目(stage 28)〜8日目(stage 34)では,1〜2層の細胞構造から成り,細胞間隙も不完全であった。孵卵9日目(stage35)頃から1層構造と成り,厚さも均一で,生後角膜内皮に近い形態となった。走査型および透過型電子顕微鏡にて孵卵6日目頃より12日目(stage 38)頃まで前房側に微絨毛(microvilli)が認められた。また,孵卵7日目(stage 30)頃から繊毛(cilium)が認められたが,これは胎生期を通して各細胞の中央にみられた。微絨毛内には均一な線維層構造のみがみられたが,繊毛ではヒト胎生期角膜内皮と同様に軸系複合体構造が観察された。微絨毛および繊毛は,いずれも房水排出の開始前より認められ,微絨毛は吸収機能の上から,細胞内代謝を行なう為の表面積拡大を担っていると考えられた。また,繊毛は本来,運動機能を有する事より,房水循環開始前では前房内不純物の排除を,房水循環開始後では房水の循環の補助を行なっている事が示唆された。

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© 1994 杏林医学会
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