杏林医学会雑誌
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炎症性腸疾患の病因病態に関する実験的検討 : ウサギ大腸に対するLTB_4及びTNF_αの注腸投与とリノール酸食
福嶋 健一
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1994 年 25 巻 4 号 p. 565-577

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抄録

炎症性腸疾患(IBD)の病因病態にLeukotriene B_4(LTB_4)とtumor necrosis factor α (TNFα)が深く関与していると考え,これらを普通食,またはLTB_4の前駆体であるリノール酸を多く含んだ餌で飼育したウサギに経肛門的に投与し,大腸におよぼす影響を組織学的に検討した。Crohn病の初期病変として腸管リンパ濾胞の態度は極めて重要であり,このリンパ濾胞を大腸組織切片から比較検討した。その結果,普通食で飼育したLTB_4注腸後TNFα注腸群およびリノール酸食で飼育したTNFα注腸群において潰瘍性大腸炎の初期像に類似した組織変化を認めた。リンパ濾胞数の比較では,リノール酸食のコントロール群(6.50±2.59個)は普通食のコントロール群(1.83±1.47個)に比べ有意に増加し(p<0.01),リノール酸食のTNFα注腸群は最も増加していた(12.17±2.93個,p<0.05)。以上よりリノール酸食はIBDの病因に関与し,病態を悪化させる可能性が示唆された。

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© 1994 杏林医学会
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