杏林医学会雑誌
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多剤耐性緑膿菌株による院内感染および流行の監視システムの構築
岡崎 充宏
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2001 年 32 巻 3 号 p. 181-191

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抄録

本研究は多剤耐性緑膿菌に対する院内感染および流行の監視システムを構築することを目的としてレトロスペクティブに調査を行った。この調査は1995年1月から2000年12月の間に本院において保存された臨床材料由来の多剤耐性緑膿菌102菌株を対象に, O血清型別およびrandomly amplified polymorphic DNA (RAPD)法を用いて組み合わせた型別を指標とし分離菌株の伝播経路の探査および院内感染対策を検討した。供試菌株102株のO血清型の分布はC型が47.1%, E型が27.5%,およびB型が7.8%と優勢であった。これらの菌株の各病棟での分布状況はC型が2A病棟, B型が3Aおよび4A病棟の患者に集中し, E型は広範囲の病棟の患者から分離された。O血清型別による解析は各病棟での分離菌株の分布を把握することが可能であったが,詳細な分離菌株の伝播経路は明確にできなかった。これらの分離菌株を対象にRAPD法を用いて遺伝子型別を行った。 C型, B型,およびE型のDNAパターンはそれぞれ10, 2,および18パターンに分別された。2A病棟では主に2つの遺伝子型の菌株がそれぞれ施行し,人を介した伝播であったことが推定された。また本病棟のO血清型別不能な2菌株は流行菌株と同一であった。B型はC型と同様な伝播が推定され病棟間での交差感染を認めた。E型は遺伝子的に多様であり各病棟での散発的な発生であった。以上のことからO血清型別とRAPD法を組み合わせた型別解析は効率よく迅速に本菌の院内感染および流行を監視し,院内感染予防対策を遂行するために有効であった。

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© 2001 杏林医学会
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