杏林医学会雑誌
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多彩な全身症状を合併したpseudo-Bartter症候群の一例 : 全身症状の本邦における文献的考察を含めて
関内 真紀穂神谷 康司福岡 利仁和久 昌幸有村 義宏副島 昭典中林 公正長澤 俊彦
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2001 年 32 巻 3 号 p. 193-199

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抄録

症例は51歳女性。既往歴に36歳時より痛風あり。平成9年より高尿酸血症に対し近医で内服加療を開始していたが,平成10年7月には軽度の腎機能障害を指摘されていた。平成10年12月下旬より発熱が出現し平成11年1月7日には浮腫も認めたため近医を再診し,血液検査上腎機能障害・貧血・炎症反応高値を認め,精査・加療目的に平成11年1月13日当科へ紹介入院となった。入院時るいそうを認め,血圧は正常で,低カリウム血症,低クロール性代謝性アルカローシスを呈し,また経過中に高レニン血症・高アルドステロン血症を認めた。血中よりフロセミドが検出されたためpseudo-Bartter症候群と診断した。合併症として貧血・高脂血症・肝機能障害・腎膿瘍を認めた。腎生検では慢性間質性腎炎(chronic tubulointerstitial nephritis; chronic TIN)像が認められた。貧血に対して輸血を行ない,低カリウム血症に対しカリウムを含有する補液療法を施行したところ,腎横能障害・高脂血症・肝機能障害は改善し,第60病日に退院となった。pseudo-Bartter症候群はTINによる腎障害および腎外合併症を伴うことが多いが,腎外合併症に関しての報告は少ない。今回,我々は貧血・高脂血症・肝障害・腎膿瘍を伴うpseudo-Bartter症候群の一例を経験したので,全身合併症に関して本邦における文献的考察を含めて検討した。pseudo-Bartter症候群では,発症の原因や症状に留意し,合併症を含めた全身的検索を行い加療する必要がある。

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