2022 年 53 巻 2 号 p. 23-29
Staphylococcus argenteusは2015年にS. aureusから細分類された新菌種であり,日常検査で正確な菌種同定が困難である。近年,本菌による侵襲性感染症の報告が散見されるが,検出率や病原性は不明な点が多い。そこで2016年から2019年にかけて杏林大学医学部付属病院で血液培養から検出されMethicillin-sensitive S. aureusと同定された菌株について再検討を行い,S. argenteusと同定された菌種を対象に毒素産生遺伝子検出,薬剤感受性試験を行った。312株のうち2株(0.6%)がS. argenteusと同定された。2株とも毒素産生遺伝子の保有はなく,ペニシリン系抗菌薬以外に感性を示した。血液培養からの検出率は諸外国の報告と比較して低いことが示唆された。今後,日本におけるS. argenteus感染症の有病率や,臨床的意義について更なる検討が必要であり,そのためには簡便な菌種同定法の構築が求められる。