杏林医学会雑誌
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症例報告
多発骨折を契機に発見された副甲状腺癌の1例
渡部 こずえ平野 浩一中里 陽子三ツ間 智也菅間 博近藤 晴彦
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2022 年 53 巻 2 号 p. 39-43

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抄録

繰り返す骨折の原因精査の結果,副甲状腺癌と診断し得た症例を報告する。
症例は45歳女性。右大腿骨頚部骨折の術後リハビリテーション中に右鎖骨を骨折した。重度の骨粗鬆症と判明し,同時に高Ca血症,高intact-PTH血症を認めた。画像検査所見では甲状腺右葉背側に63×38 mm大の充実性と嚢胞部分が混在する腫瘤を認め,MIBIシンチグラム(methoxyisobutylisonitrile シンチグラム)でこの腫瘤に一致して著明な集積像を認めたため,右副甲状腺の腫瘤による原発性副甲状腺機能亢進症と診断した。
臨床所見より副甲状腺癌の可能性を念頭におき,甲状腺右葉と腫瘍をen blocに摘出しリンパ節郭清も行った。反回神経の温存を試みたが腫瘍の被膜に巻き込まれており,やむなく合併切除した。最終病理診断は低悪性度の副甲状腺癌であった。副甲状腺癌は稀な疾患であり,副甲状腺機能亢進症症状を契機に外科的切除が施行され最終的に診断されることが多い。

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