1976 年 7 巻 4 号 p. 220-228
14名の鉛工作業に従事する労働者について, 鉛の生体反応に関する諸検査を実施した。その結果, 現在も鉛工職人として働いている6名は, 血中鉛が, すべて60μg/dlの労災基準値を超え, ALA-D活性値も著しく低下していることが見出された。また, 尿中のコプロポルフィリンやδ-ALAの値も高値を示した。鉛職場に出入りし, 現場の作業管理をおこなつている他の8名では, 鉛工職人の6名とともにCaNa_2 EDTAによる誘発試験で, 1名を除き, 500μg/Dayを超える鉛を排泄し, 過去の鉛の生体内の蓄積が大きいことを示したが, 尿中鉛は, いずれも, 現行の労災基準値よりも低値を示した。臨床的諸検査では, 鉛暴露との関連を明確に示す資料は, 得られなかつたが, 腎障害と肝機能障害を疑われるものが, 鉛の長期暴露群にみられた。