杏林医学会雑誌
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多項式モデルによる循環系の分析法
岡井 治
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1976 年 7 巻 4 号 p. 250-256

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抄録

循環系の多くのパラメータは相互に関連をもつているので, 従来, その分析を行なうとき, 実験動物に外科的手術を行ない, 対象とするパラメータ以外を固定するなどの方法がとられてきた。しかし, この外科的処置は生体の生理的制御機構を傷害する可能性がある。そこでこの研究では最小の手術処置で多項式を用いて循環系の分析方法を検討した。循環系のパラメータは生体の必要に応じた心拍出量を与えるために働いているとして, 心拍出量Fを心拍数Hと血圧Pの函数(多項式モデル)で表わした。そのモデルは, 心拍出量の実測値と計算値の相関係数で評価することにした。実験結果はつぎのようであつた。1) 心拍数あるいは血圧の2次式はよい相関を示す。これは, 循環系が非線形性をもつことを示す。2) 心拍出量に対して血圧より心拍数の方が密接な関係をもつ。3) 血圧100 mmHgのとき心拍数の増加にしたがつて心拍出量も増加した。4) 心拍数120 beats/minのとき血圧の変化で心拍出量は少し変化したが, 特定の傾向はみられなかつた。5) 心拍数と血圧の一次結合で示される緊張度(T=aH+bP, a, b;定数)を導入して心拍出量は緊張度の二次式(F=k_0+k_1T+k_2T^2, k_0, k_1, k_2;定数)で表わした。高い相関がえられ, b/aが非常に小さいことから心拍出量は, 心拍数によりあらく, 血圧により, こまかく制御されているように考えられる。以上のように, 多項式モデルによる数学的分析と生物的分析があり, これらが循環系だけでなく, 他の生体機能の分析にも応用できることを示した。

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© 1976 杏林医学会
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