杏林医学会雑誌
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経過中,振戦,アテトーゼ,ジストニーが目立った多発性脳梗塞の1例
沢口 義康小池 秀海副島 昭典若林 行雄渡辺 康久宮田 省三吉野 佳一
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1978 年 9 巻 4 号 p. 271-275

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抄録

多発性脳梗塞の患者に出現した不随意運動を病巣との対比において検討した。症例は46歳の右利きの男性で,4年前に右片麻痺と失語を呈したが,約1年で回復した。今回の発作では麻痺はなく,右方への共同偏視,失語および躯幹のジストニー,右側に強い振戦アテトーゼを呈した。CT像では左の基底核部に古い梗塞巣があり,右の前頭葉,基底核部,頭頂側頭葉にcontrast enhancementを伴う新しい梗塞巣が認められた。今回の脳梗塞は右側に生じたにも拘らず,不随意運動は右側に強く出現した点が注目された。最初の発作時に生じた左基底核の障害は麻痺のために症状を発現せずに経過し,麻痺の回復後に起こった今回の右の梗塞がおそらく左側大脳の血行にも影響し,これを契機として左の基底核の変調が顕在化した可能性が考えられる。なお,不随意運動に対する薬物治療の効果は乏しく,ジストニー,アテトーゼは1年後も持続している。

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© 1978 杏林医学会
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