抄録
近年、「共生」に関する事柄は学校教育の中でも取り扱われている。長ほか (2019)によれば、大学進学者において「共生社会」という言葉の認知と理想 的な社会的配分のあり方として「必要原理」を支持することが関連するとされ る。一方で、両者が関連するメカニズムは、具体的な検討がなされていない。 そこで、本研究は、両者が関連するメカニズムについて、「共生社会」という 言葉を認知し、かつ「必要原理」を支持する人々が結果的に大学進学者となっ ている可能性【選抜の影響】を検討することを目的として、地方公立進学校の 高校 1 年生が支持する理想的な社会的配分のあり方と「共生社会」という言 葉の認知の関連について分析した。その結果、高校 1 年生にとって、「共生社 会」という言葉の認知は理想的な社会的配分のあり方として「実績原理」を支 持することと関連していることなどを明らかにした。この結果は、両者が関連 するメカニズムについて【選抜の影響】を棄却したことに加えて、高校 1 年生 にとって「共生社会」という言葉の認知と、社会的分断を克服する基盤原理と して重視される考え方である「必要原理」を支持することが関連していないこ とを示した点に意義がある。