九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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訪問リハビリテーションにより活動と参加が拡大し,その要因を検討した症例
~Community Integration Questionnaireによる参加のアウトカム評価を用いて~
*有竹 愛理
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p. 25

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抄録

【はじめに】

厚生労働省は活動と参加に焦点を当てたリハビリテーション(以下リハ)により,高齢者が要介護状態にあっても役割や生きがいをもって地域で生活することを推進している.しかし役割や生きがいを含む参加の要介護者に対する報告は少なく,その要因も検討されていない.Community Integration Questionnaire(CIQ)は家庭統合(HI),社会統合(SI),生産性(PA)の3つに分類される参加評価で,本邦では70歳代まで健康成人の平均が報告されている.今回,CIQを使用し訪問リハ5か月間の経過の中で活動と参加が拡大した症例の要因について検討したので報告する.

【症例紹介】

80歳代女性.夫と同居.診断名は左肩脱臼骨折術後,右上腕骨大結節骨折後.合併症に骨粗鬆症,関節リウマチ,気管支喘息,帯状疱疹後神経痛.既往歴にX-1年橈骨骨折とX年4月大腿骨骨折.X年7月転倒し両肩骨折受傷.10月自宅退院し,再転倒予防と自宅内活動安定を目的に訪問リハ開始となった.

訪問開始時は体重48kg,BMI21.9,HDS-R28点,疼痛NRS7点,握力は右3.0/左5.0kg,TUG13.9秒,最大歩行時間15分距離280m,FIM105点,LSA23点,CIQ4.25点(HI1.25点,SI2点,PA1点)であった.住環境は段差多く夫は協力的だが独居時間も長い.転倒歴が複数ある本症例は再転倒リスクが高く,長期入院後の参加制約があった.

【介入】

HDS-RやFIMが高いこと,夫の協力を得られること,家事や庭への興味意欲が高いこと,退院時に再転倒リスク指導を受けていることをストレングスと捉え介入した.機能面はプリントとチェックシートにより早期の自律的管理へ移行した.活動面は家事や通院など参加を具体的に想定したADL練習や屋外練習を行い,自己フィードバックを反復した.参加は,夫の協力のもと外出活動範囲を主体的に決定した.自律的危機管理を育み,興味意欲を生かした主体的選択を反復し「できる」経験の蓄積を行った.

【結果】

3か月後には,体重49kg,BMI22.3,HDS-R27点,疼痛NRS7点,握力は右6.0/左11.0kg,TUG10.6秒,最大歩行時間30分距離960m,FIM111点,LSA29点,CIQ11.75点(HI3.75点,SI7点,PA1点),FES31点となった.CIQ項目別では買物分担率,調理分担率,金銭管理,買物頻度,余暇頻度,訪問頻度,他者交流に加点があった.

5か月後は体重46kg,BMI21.0,HDS-R27点,疼痛NRS7点,握力は右4.5/左6.0kg,TUG10.2秒,最大歩行時間46分距離1320m,FIM114点,LSA47点,CIQ11.75点(HI3.75点,SI6点,PA2点),FES33点となった.CIQ項目別では訪問頻度に減点,外出頻度に加点があった.

【考察】

本症例は介入から3か月でLSA,CIQとも向上し5か月でLSAは大きく向上したがCIQ合計点の変化はなかった.聞き取りでは,LSAでは通院や買い物など必然性の高い外出の増加が要因と考えられた.さらにCIQでは初期の向上は家事役割が,後期の停滞には余暇意欲低迷や家族協力の限界が影響と考えられた.本症例の活動と参加の拡大は,外出や役割とともに,余暇意欲や人的環境が要因と考えられ,今後は個人因子や環境因子の詳細を評価する必要を感じた.

【倫理的配慮,説明と同意】

本報告はヘルシンキ宣言に則って行い,医療法人しょうわ会倫理審査委員会の承認を受けた(S2019-01).本報告に関連し開示すべき利益相反関係にある企業はない.

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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