主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 29
【目的】
「成人肺炎診療ガイドライン2017」では、新たなクリニカルクエスチョンとして「口腔ケアの実施」追加され、誤嚥性肺炎において口腔ケアの重要性を示唆している。2014年厚生労働省老人保健健康増進等事業にて「オーラルフレイル」が提言されており、オーラルフレイルは口腔内サルコペニアを基盤とする口腔機能低下であり、田中ら(2017)の研究ではオーラルフレイルは要介護リスクや死亡発生を高めるとしている。しかし、現状は統一化された評価はなく、臨床においても評価の重要性があるとは言い難い。本研究は急性期病院に入院された誤嚥性肺炎患者において口腔機能を評価し、肺炎の重症度や身体機能との関係を調査することを目的とした。
【方法】
2018年1月から9月までの間に、当院に誤嚥性肺炎の診断にて入院し調査可能であった38名(男性13名 平均年齢88.5±6.6歳)を解析対象とした。調査項目として性別、年齢、身長、体重、入院時Eilers口腔アセスメントガイド(以下OAG)、退院時Functional Ambulation Categories(以下FAC)、在院日数、転帰、FIM、介護度、血清アルブミン値(以下Alb)、A-DROP該当数をカルテより後方視的に調査した。また、原法に基づきOAGを3群に分類した【正常群=8点(以下A)、軽度障害群=9~12点(以下B)、重度障害群=13点以上(以下C)】。統計学的手法として、Kruskal-Wallis検定を用い3群間の比較を行った後、Bonferroniの多重比較を調査項目それぞれに行った。さらに、Spearmanの順位相関を用いOAGとその他の項目との関連性を調査した。
【結果】
OAG3群の比較として(median)年齢(A=87歳、B=90歳、C=90歳 n.s)、BMI(A=20.9、B=20.3、C=17.5 n.s)、FAC(A=3.5、B=2、C=0 p < 0.05)、在院日数(A=11.5日、B=11日、C=14日 n.s)、FIM(A=93点、B=39点、C=18点 p < 0.01)、Alb(A=3g/dl、B=3.3g/dl、C=3.2g/dl n.s)、A-DROP(A=1.5項目、B=3項目、C=3項目 n.s)であった。また、OAGはA-DROPと在院日数で正の相関を認め(A-DROP:r=0.32 p < 0.05 在位日数:r=0.34 p < 0.05)FACで有意な負の相関を認めた(r=-0441 p < 0.01)。
【考察】
本研究の結果、OAGにおける重度口腔機能障害を持つ肺炎入院患者は65%認めた。OAGは急性期肺炎の重症度と正の相関関係であった。これは米山(2001)らの口腔ケアが肺炎発症予防を示唆した研究を支持しており、さらに急性期肺炎患者の評価においてOAGの重要性を示唆している。また、口腔機能と身体機能の相関関係があり、先行研究では栄養状態との関わりが述べられている論文を多く認める。しかし、今回の研究ではAlbは正常範囲であったことから急性期治療の影響や、その他の影響も考えられたものの、交絡要因についての回帰分析は本研究のサンプルサイズでは行えなかったことが本研究の限界といえる。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た。本研究で得られた情報については、個人が特定できないよう匿名化を行い、研究代表者が責任をもって厳重に管理する。本研究において、開示すべきCOI関係にある団体企業はありません。