主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 30
【はじめに・目的】脳卒中治療ガイドライン(2015)において、早期座位・立位、装具を用いた早期歩行トレーニングが推奨されている。しかし、当院回復期病棟では、長下肢装具作製機会が少なく、2017年度の長下肢装具の作製本数は0本であった。担当セラピストに装具療法に対する事前アンケート行った結果、装具の必要性の判断や装具の選定時期、作成の流れの理解が不十分なことが伺えた。そこで、標準的な装具療法を推進する取り組みを行ったので報告する。
【方法】装具療法を行うための指標となる判断材料がなく、知識不足や、装具作製経験の不足に対して、チェックリストやプロトコールを作成し、装具の必要性・適応の判断が共有できる状態を目指した。①脳卒中ガイドラインに基づいた学習や治療用装具について装具療法に必要な知識の共有に向けた学習会を実施した。②装具使用のチェックリスト・プロトコールの作成し、新規の脳血管障害患者を対象に試用。on-the -job- training(以下OJT)として、装具チームのスタッフを中心に、チーム会議でのチェックリストの報告を実施した。③装具作成患者様のカンファレンスの実施。今年度、全てのPTが装具作製する機会をえることは難しいため、症例を通して装具作製経験の共有を図った。
【結果】チェックリストは2018年9月~2019年3月の期間中、計82名適用。装具カンファレンスは6回行い、カンファレンスの中で、装具の種類についてだけでなく、装具作製の流れから目標設定、義肢装具士との情報共有内容などをビデオカンファレンスとして実施。装具作成に至るセラピストの思考や反省点も共有した。これらの結果、取り組み後のアンケートでは、装具作製の流れや必要性の判断が「援助にて実施できる」以上が100%となった。また、評価用装具の不足を補うために、義肢装具士と協力してレンタル可能な装具一覧表の作成や義肢装具士や患者家族に装具作成を行う際、提供する情報の整備を行った。
【考察】装具療法の標準化にむけた取り組みを行い、学習会の実施による知識の共有や、装具チェックリストの実施を適応患者に限らず、対象者全員に実施することで装具の必要性の理解につながった。また、チーム会議やOJTで適宜指導を行うこともこれらの一因と考える。今後、評価用装具の充実を行い、採型までの日数短縮も求めていきたい。また、急性期~回復期~維持期・生活期へともに情報共有を行い、次のステージを見据えた装具療法の取り組みの必要性も再認識した。今年度は標準的な介入を行ったが、それに加えて個別性を持った介入を行うことで医療の質の向上、装具療法の質の向上につながるのではないかと考える。個別性を持って歩行の再獲得、QOLの向上にむけた取り組みを行っていきたい。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者に本研究の説明をし同意を得た。また、得られたデータは個人情報が特定できないように配慮した。