九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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当院理学療法士の病床管理における貢献度について
*太田 靖
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p. 3

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抄録

【目的】

近年、診療報酬改定の度に在宅復帰率向上、平均在院日数短縮が求められる。この数値は、今後も厳しくなることが予想されるが、我々は、ADL改善によって、この数値に大きく貢献できる職種である。今回、ADL改善率に着目して、病床管理にどう貢献できるか検討したのでここに報告する。

【方法】

平成29年4月から平成30年3月の期間、当院(一般病棟、地域包括ケア病棟、医療療養型病棟【在宅復帰機能強化型】、医療療養型病棟、以下それぞれA病棟、B病棟、C病棟、D病棟とする)で入院リハビリテーション(以下リハ)を行い、退院した患者195名(男63名、女132名 平均年齢82.4±9.8歳)を対象に、入院時と退院時のBathel Index(以下BI)改善率、在宅復帰率、在院日数を退院時の病棟別で調査し比較検討した。

【結果】

BI改善率、在宅復帰率、在院日数はA病棟では、14.9%、88.1%(実際の自宅57.1%)、24.28日。B病棟では、14.49%、87.4%(75.9%)、39.89日。C病棟では、43.57%、94.4%(61.1%)、86.1日。D病棟では、23.93%、70.8%(43.8%)、97.27日という結果となった。

【考察】

当院では、A病棟は平均在院日数21日以下、B病棟は入院期間上限60日、在宅復帰率70%以上、C病棟は在宅復帰率50%以上の数値を満たす必要があり、今回の調査の結果を検討してみた。A病棟で退院した患者はBI改善率は低く、急性期治療が終わり今後ADL改善を見込めない患者が短期間で自宅あるいは施設に退院したと考えられる。ADL改善が見込める場合や、長期に病院にて医学管理が必要な患者は、他病棟へ転棟したと言える。B病棟、C病棟で退院した患者は、BI改善率が高く在宅復帰率も高い。B病棟で退院した患者は、実際の自宅に退院した割合も高く、集中的にリハを提供出来たのでADLが向上し退院したと考えられる。C病棟で退院した患者は、退院調整も含め、比較的長い期間をかけてリハを提供でき、自宅退院を目指したと言える。D病棟で退院した患者は、死亡退院の割合が他病棟より高く、長期的に医学管理のもとでリハの提供が必要だったと考えられる。今回の結果は、病床機能に応じた結果となっている。

【まとめ】

我々は、患者に良い技術を提供し運動機能や、ADL向上を図ることを第1に考えなくてはならない。しかし、我国が在宅復帰を推進していく中でADL改善を予測し、在宅復帰可能かを総合的に判断し、病床管理に貢献することも大きな役割である。当院において、今後も病床管理会議(医師、看護師、ソーシャルワーカー、医事課、理学療法士などで構成)へ毎日参加し、多職種カンファレンスや病院と在宅部門の連携の強化を継続して行い、経営的視点を入れながら日々業務にあたる必要がある。さらに介護度が高い患者の早期退院の在宅での受け入れ体制の整備、2019年6月開設予定の介護医療院(D病棟からの転換)でのリハ運用方法の検討、また、今回の調査結果を統計学的に検討することで、より正確なADL改善予測ができるようにすることが課題である。

【倫理的配慮,説明と同意】

【倫理に関する項目】

本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、当院の承認を得たものである。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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