主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
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【はじめに,目的】
足指機能は,バランス能力や筋力と密接な関係がある.足指機能の定量的な評価方法の一つに足指圧迫力がある.しかし足指圧迫力の研究は散見される程度であり,その多くは座位で測定を行っている.そこで本研究は実動作に近い立位で足指圧迫力の測定を行い,足指圧迫力の信頼性と妥当性を検討した.
【方法】
対象は通所リハビリテーションを利用する要介護高齢者78名(82.1±6.9歳)とした.足指圧迫力の評価は足指押力測定器を用い,立位にて左右二回ずつ測定した.身体機能は,握力,大腿四頭筋筋力,足関節の底背屈筋力,CS-30,開眼片脚立位時間,最大歩行速度,骨格筋量とした.測定値の再現性は級内相関係数(ICC1,1)を,系統誤差の確認はBland-Altman分析を用いた.立位での足指圧迫力の妥当性は各身体機能との関連をPearsonの相関係数から検討した.分析はR2.8.1およびSPSS 25を用いた.
【結果】
立位での足指圧迫力は,右1回目10.5±5.8kgf,2回目11.8±5.9kgf,左1回目10.0±5.2kgf,2回目10.6±5.9kgfであった.ICCは右が0.85(95%CI:0.77~0.90),左が0.78(0.67~0.85)であった.系統誤差は,右足指圧迫力に固定誤差の存在を認めたが,左足指圧迫力には固定誤差,比例誤差ともに認められなかった.右足指圧迫力に固定誤差が確認されたためLOAを求めた結果-1.33kgf(-2.0~-0.7)であった.SEMは右2.1kgf,左2.6kgfでありMDCは右5.8kgf,左7.2kgfであった.次に,立位での足指圧迫力の妥当性は相関係数から中程度(r=0.4)以上の関連を検討した.右の足指圧迫力は,握力,大腿四頭筋筋力,背屈筋力,底屈筋力,骨格筋量と,左の足指圧迫力は,握力,大腿四頭筋筋力,背屈筋力,骨格筋量と,足指圧迫力左右合計値は,握力,大腿四頭筋筋力,背屈筋力,底屈筋力,骨格筋量と有意な相関が認められた.なお,左右の足指圧迫力ともに片脚立位時間,CS-30,最大歩行速度と中程度以上の相関は認められなかった.
【考察】
立位での足指圧迫力の信頼性は,左右ともにICCは高値であり十分な信頼性が確認された.一方,右の足指圧迫力に約-1.3kgfの固定誤差が確認された.これは,2回目の測定値は1回目よりも1.3kgf程度大きくなることを意味する.2回目が大きくなることから推察すると,誤差の要因は測定の練習が不十分であったと考えられた.安定した測定値を得るには2回ほど練習をしてから測定することが望ましいことが明らかとなった.次に,立位での足指圧迫力は,握力,大腿四頭筋筋力,背屈筋力,底屈筋力,骨格筋量と中程度以上の相関が認められた.立位での足指圧迫力は筋力の指標と関連があることが明らかとなった.
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の趣旨と内容について十分に説明し,理解を得たうえで協力を求めた.なお,研究の参加は自由意思であり,対象者にならなくても不利益にならないことを説明した.
また,研究調査が行われた施設の施設長および現場責任者の許可を得てから実施した.本研究は倫理審査委員会(承認番号29-11)の承認を得てから実施した.