主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 71
【目的】
当院外来リハビリに通院している患者の中でも変形性膝関節症(以下:膝OA)は担当することの多い疾患の一つである。その中でも農作業に従事している患者治療は、治療が難渋し、長期に理学療法を要することを経験する。今回、農作業の有無が膝機能にどのような影響を与えるかを比較・検討した。
【方法】
対象は当院で膝OAの診断を受けた外来リハビリ初回患者83名(男性14名、女性69名)とした。農作業の有無はアンケートでの記入、カルテ上の記載で判断し、農作業群26名(男性3名、女性23名、年齢70.4±7.6歳)、非農作業群57名(男性11名、女性46名、年齢72.4±6.6歳)に群分けした。膝機能評価は変形性膝関節症患者機能評価尺度(以下:JKOM)を使用した。JKOMは膝の痛みの程度をVisual Analogue Scale(以下:VAS)で行い、そして、膝の痛み・こわばり、日常生活の状態、普段の活動、健康状態の5項目からなる。膝の痛みの程度以外の4項目は全25問からなり、内訳は膝の痛み・こわばりが8問、日常生活の状態が10問、普段の活動が5問、健康状態が2問からなる。痛みの程度は点数に加算せず、その他の4項目の個々の設問では、最も良い機能を0点、最も重症を4点として合計100点満点として採点した。2群間の比較は、対応のないt検定を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】
JKOMにおいて膝の痛みの程度は農作業群55.5±23.7mm、非農作業群47.2±27.5mmであった。合計点数は農作業群39.5±20.2点、非農作業群35.4±19.1点であり、各項目では膝のこわばりは農作業群14.5±6.1点、非農作業群13.5±6.4点、日常生活の状態は農作業群13.3±9.1点、非農作業群11.4±7.7点、普段の生活は農作業群7.2±5.7点、非農作業群7.0±6.2点、健康状態は農作業群4.4±2.0点、非農作業群3.4±2.0点であった。2群間において痛みの程度、合計点数、各項目の膝のこわばり、日常生活の状態、普段の生活に有意差は認められなかった。
【考察】
今回、農作業群と非農作業群の膝機能についてJKOMを用いて、比較・検討した。菊池らは、しゃがみ込み等の農作業動作は膝関節等に大きな負荷がかかると報告しており、農作業群が非農作業群に比べて、点数が低いことが予想された。しかし、すべての項目において有意差は認められなかった。このことは、JKOMの質問内容に農業に関する項目がないことが影響していることが考えられた。そのため、農作業に従事している患者の膝機能評価には、より明確な農作業動作評価や環境の把握、農作業が収入を得る経済活動であるといった背景を捉える必要性があると考えられた。
【まとめ】
今回、膝OAと診断された患者を農作業群と非農作業群に分け、JKOMを利用して膝機能評価を行った。2群間で有意差は認めなかったが、農作業動作や環境についての評価の必要性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,倫理面の配慮において,当院における倫理委員会の承認を得た(承認番号:2023).なお,利益相反に関する開示事項はない.