主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 87
【目的】
非特異的腰痛の発症には、心理的要因や運動習慣が関与すると報告されている。しかし、身体機能との関連や予後関連因子についての報告は少ない。山下らは、椎間関節や傍脊柱筋など腰椎後方要素に分布する受容器は侵害刺激に対して比較的高い感受性を有していると述べている。今回、腰椎後方要素への関与が考えられる腰椎伸展に伴う疼痛に着目し、運動療法介入による疼痛改善の違いについて身体機能評価、患者立脚型腰痛評価表を用いて検討した。
【方法】
対象は、2018年1月から2019年1月の間に、腰椎伸展時痛を愁訴とする患者で運動療法を行った患者うち、分離症患者は除外した22名(男性10名、女性12名)、平均年齢53.3(22-86)歳であった。運動療法開始時に腰椎屈曲可動性の有無、On elbows肢位・On hands肢位の可否、Kempテスト、立位での腰椎前彎程度の評価として立位での壁と腰部の距離(以下、 立位壁‐腰椎距離)、有症期間(1ヵ月未満または以上)、Visual Analog Scale(以下、VAS)を用いた腰痛、殿部・下肢痛、殿部・下肢の痺れ、日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下、JOABPEQ)を評価した。治療開始から2か月後のカルテを後方視的に調査して、腰痛が改善した群(以下、改善群)と持続した群(以下、持続群)に分類した。統計分析は、群間での身体機能、有症期間、JOABPEQ得点はx2独立性の検定、VASはMann-whitney検定、立位壁‐腰椎距離は連関係数を検討した。なお、有意水準5%に設定した。
【結果】
分類は改善群12名、持続群10名であり、On elbows肢位の可否と有症期間に有意な差を認めた。On elbow肢位が不可能であったのは改善群0名に対して、持続群4名(40%)であり、持続群が有意に多かった。有症期間は、1ヶ月以上であったのは改善群2名(20%)に対して、持続群6名(50%)であり、持続群が有意に多かった。分類と立位壁-腰椎距離との連関係数は0.54であり、持続群では腰椎前彎が強い傾向にあった。
【考察】
持続群は立位時腰椎前彎が強いことから日常的に腰椎が伸展傾向にあり、On elbows肢位により腰椎伸展が強要されるために困難であったと推察された。腰椎前彎傾向にある症例では、腰椎後方要素である腰椎椎弓・椎間関節への負荷が生じる。山下らは、腰椎または周囲組織には侵害受容器が存在し、侵害刺激に対する感受性に差があり、椎間関節の機械的閾値は低く弱い侵害刺激にも反応すると述べている。持続群では長期に繰り返される刺激により感受性が高まっていると推察された。疼痛の慢性化の危険因子として、心理社会因子など様々な要因が報告されているが、身体機能面へのアプローチとして腰椎前彎の軽減を目的とした運動療法、生活指導が有効な可能性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち当院倫理委員会の承認を受け(承認番号:20190704-2)被験者の同意を得た後に実施した.また,筆頭著者に開示すべき利益相反はない.