主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 86
【目的】
透析患者は心不全や虚血性心疾患また閉塞性動脈硬化症などの心血管系の合併症を併発しやすく、これらは生命予後や身体機能などと関連するため発症予防が必要である。
当院の外来透析患者に対して身体機能改善目的に透析中の有酸素運動を開始した。有酸素運動には運動機能改善だけではなく高血圧や動脈硬化の改善効果も期待できるので、透析患者の合併症の中で多いとされる閉塞性動脈硬化症に対する有酸素運動の効果を血流状態と血液検査にて検討したので報告する。
【方法】
対象は当院外来透析患者で透析中に有酸素運動を実施し、閉塞性動脈硬化症の合併症がある7名(男性3名、女性4名。年齢39歳から73歳、平均年齢53歳)。有酸素運動は、リカンベントタイプエルゴメータにてボルグスケール11から13までの負荷にて20分間行い、週3回の透析実施時に1年間実施した。この期間中は閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法や食事制限は行っていない。運動を開始前と終了後に末梢動脈の血流状態を確認するAnkle Brechial Pressure Index(ABI)と腎機能と脂質代謝の状態を血液検査のクレアチニン値(Cr)、尿素窒素値(BUN)、LHD、HDL、中性脂肪値(TG)、コレステロール値(TC)を測定した。また、身体機能の変化を10m歩行速度、ファンクショナルリーチテスト(FR)、Timed and Up Go test(TUG)、Chiar and Stand 5(CS5)にてそれぞれ測定した。これらの測定値を開始前後で比較した。
【結果】
運動実施においてシャントトラブルなどの有害事象はなかった。ABIは右下肢1.16から1.17。左下肢1.14から1.16となり増悪はなかった。血液検査のCrは11.8mg/dlから11.49 mg/dl。BUNは55 mg/dlから68.3 mg/dl。HDLは41.7 mg/dlから38.4 mg/dl。LDHは79.6 mg/dlから84.9 mg/dl。TGは90 mg/dlから127 mg/dl。TCは158.5 mg/dlから160 mg/dlとなりCrとBUNは開始前後で異常値であるが有意な増悪は認めなかった。その他の測定値は正常範囲内で、開始前後での増悪は認めなかった。身体機能の10m歩行速度は8.0秒から8.3秒。FRは34.7cmから33.4cm。TUGは7.4秒から7.4秒。CS5は10.8秒から10.2秒となり開始前後で身体機能は変化なかった。
【考察】
有酸素運動を行うことにより血液中に窒素を産生し動脈硬化に対して改善効果をもたらすとする報告や我々は透析患者に6カ月間有酸素運動を実施した群と実施しなかった群において、有酸素運動を実施した群に血管機能の改善が得られたことを報告している。これらより1年の間ABIの増悪が認められなかった要因としては継続的な有酸素運動の実施が考えられた。しかし、血液透析は継続的なもので、今後加齢的変化も加わるためにこれらを含めた身体機能の維持や合併症の予防によるQOL維持を目的としたリハビリテーションが必要であると考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、当大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:第13281)。本研究を実施するにあたり対象者へ研究の趣旨、内容および調査結果の取り扱い等に関して説明し、書面にて同意を得た。
開示すべき利益相反はなし。