抄録
運転中に状況の変化へ柔軟に対応するためには実行機能の役割が重要となる。高齢運転者の適性検査では、実行機能に生じる加齢変化を多面的に評価することが必要となる。本研究では、切り替え、更新、抑制という3つの要素を包む新たな実行機能評価課題の開発を試みた。一定のペースで提示される数字への反応が求められるgo/no-go課題(5ブロック225試行)を新たに作成し、45歳から80歳の参加者124名に課した。数字の提示規則をブロック間で操作し、規則変化が課題パフォーマンスに与える影響を検討した結果、提示規則が変化したブロックでは、コミッションエラーの発生率が有意に増加した。また反応時間やオミッションエラーの発生率などは年齢と有意な正の相関を示した。既存の運転適性検査やTrail Making Testとの関連の検討から、実行機能の加齢変化やその個人差を測定可能な評価課題となっていることが示唆された。