九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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人工股関節全置換術後早期における満足度・ADL獲得状況調査の有用性の検討
*折田 慎史*松本 亮*杉安 直樹*白木 信義*生駒 成亭
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キーワード: ADL獲得, 満足度, 疼痛
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p. 95

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抄録

【目的】

人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:以下THA)は主に股関節疾患による心身機能・構造、活動・参加・心理等を改善させる治療手段の1つである。昨今、入院期間の短縮化に伴い当院では術後2週前後で回復期病棟へ転床し、3・4週で自宅退院を目標としている。当院ではJapanese Orthopaedic Association Hip-Disease Evaluation Questionnaire(以下JHEQ)とHip Disability and Osteoarthritis Outcome Score(以下HOOS)を定期的に評価しており、シームレスで円滑な病棟移行を目的として術後2週での満足度とADLの獲得状況の把握を行い、比較検討を行ったのでここに報告する。

【方法】

対象は、2018年3月から同年5月までにTHAを施行し、術後2週で調査が可能であった21例(男性3例、女性18例、平均年齢67.6±10.0歳)。術前と術後2週で、JHEQとHOOSのADLを参考に18項目中、評価困難な6項目を除外した12項目(①階段降り、②階段昇り、③椅子からの起立、④立位、⑤かがみ込み、⑥平地歩行、⑦靴下履き、⑧ベッド臥床から起立、⑨靴下脱ぎ、⑩ベッド臥床時、⑪椅子坐位、⑫便器への着座)の満足度と術後2週時の動作の可否、疼痛を前向きに調査した。疼痛はVASを用い、ADLの方法は指定せず、動作可能・困難ともに術前・術後2週の満足度をJHEQを参考に0~4点で評価した。統計学的解析は、Wilcoxon検定、T検定を用いて有意検定を行い、危険率は5%未満とした。

【結果】

ADLの満足度は、術前と比較し術後2週で全項目に有意に改善していた。術後2週でのADLは⑦11例、⑨7例困難であり、満足度平均は⑦術前/術後2週で0.50±0.67/1.00±1.00、⑨中央値及び四分位で67(57.5-73)/3(0-10)。可能な満足度は⑦1.18±1.03/2.45±0.78、⑨68.5(40.75-73.25)/22(15.75-37.5)と有意な差がみられた。術前/術後2週でのVAS平均は、57.67±22.03/19.86±16.42mmと有意に軽減していた。

【考察】

THA患者において、術前と比較し術後2週での満足度は全項目向上していた。靴下の着脱動作のみ困難な患者がみられ、VASは術前より術後2週で有意に低下していた。西川ら(2017)はTHA術後の満足度には環境因子や疼痛が影響すると報告しており、今研究でも疼痛の軽減が満足度に関与していると考える。靴下の着脱動作が可能な患者の満足度は高く、動作獲得と満足度の関連性が示された。術後2週では靴下の着脱動作が今後の課題であり、2週での評価が満足度と動作の獲得状況を把握する為に有用であると考える。

【まとめ】

THA術前と術後2週でADLの全項目において満足度は向上していた。術後2週で動作困難なADLは靴下の着脱の2項目のみであったが動作困難な患者においても満足度は向上していた。疼痛は術後2週で有意に低下していた。術後2週では靴下の着脱動作が今後の課題であり、満足度とADLの獲得状況を評価することが回復期病棟への転棟時の評価として有用であることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院倫理委員会の承認を得て実施した。また、研究実施にあたり、対象者に対し研究の主旨と目的を十分に説明し同意を得た。本研究に開示すべき利益相反はない。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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