主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 114
【背景と目的】
近年、医療保険制度の変化と並行して、病床機能再編と急性期病院の在院日数短縮の動きが加速している。当院は包括的評価制度(DPC 制度)に登録された急性期病院であり、在院日数の短縮や早期退院が術後リハビリテーションにおいて求められている。さらに、当院では平成18 年より大腿骨頸部骨折地域連携パスの稼働に準じ、医療的処置終了後には必要に応じて可及的早急にリハビリテーション目的の回復期病院への転院調整が行われている。その中で、連携パス返信資料の結果報告より、患者により回復期病院でのADL の向上率にばらつきがあり、急性期病院と回復期病院での能力の改善が緩徐的であった症例も散見され、結果として患者の総入院期間が長期化してしまっていることも少なくない。今後医療需要が増加していく背景に考慮し、過去大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折,大腿骨転子部骨折)を呈し入院した患者を後方視的に情報収集行い、転帰先の決定に際し、早期転帰先の決定に関わる因子を検討する事を目的に研究を行う。
【方法】
2019 年4 月~ 2020 年3 月に当院で大腿近位部部骨折に対して骨接合術・人工骨頭置換術を施行し回復期病院転院後、連携パス返信転送のあった52 名を対象とした。当院から転院する際に示す最終目標の歩行形態を最終的に獲得できた群を達成群(n=33)、獲得できなかった群を未達成群(n=19) に分け、年齢、在院日数、術式、認知機能、介護保険有無、意欲、理解、家族介護力、元所在、元AD L、最終目標の比較を行った。統計学的処理は、Logistic 回帰分析( 変数増加法) を行った。統計ソフトはJ-stat を用いて有意水準を5%未満とした。
【結果】
達成群、未達成群に対しLogistic 回帰分析( 変数増加法) の変数選択によって得られた変数は年齢( 編回帰係数=-0.130、p=0.023)、在院日数( 回帰係数=-0.046、p=0.156)、最終目標( 編回帰係数=-0.274、p=0.0.39) であった。各変数をみると年齢、最終目標は有意であったが在院日数は有意ではなかった。また、算出された回帰式の判別的中率は73.07%を示した。
【考察】
今回、転帰先の決定に際し、早期転帰先の決定に関わる因子を検討する事を目的に研究を行った。結果、歩行最終目標に対して若年であるほど達成する見込みが高いことが示唆された。これは、経年に伴う筋力や心肺機能等の身体機能低下、骨密度低下に伴う術後の荷重制限の影響が関わっている事が考えられる。また、転院時に予測された最終歩行目標は高いほど達成見込みが低くなっている結果であったことを踏まえ、当院入院中における身体機能・環境を考慮した上での予後予測の最良化の検討が必要であることが推測された。大腿骨頸部骨折ガイドラインにおいて、歩行能力改善に関わる因子として、年齢と認知機能、受傷前のADL が挙げられている。今回の研究において認知機能と受傷前のADL は変数選択に選出されなかった。これは認知機能低下および受傷前のADL を考慮した上での最終目標設定が行われており、最終目標の達成の有無に影響を与えなかったことが示唆された。
【まとめ】
今回の研究において、大腿骨近位部骨折術後患者に対して年齢を考慮した最終目標の設定の検討、最終目標に対しての転帰先調整の遂行が必要であることが示唆された。また、今回荷重制限の影響について検討がなされなかったため今後研究の再検討が必要であると考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
この研究はヘルシンキ宣言に沿って行い、得られたデータは匿名化し個人情報が特定できないように配慮した。本研究の計画立案に際し、事前に当院の倫理審査委員会の承認を得た。