主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 119
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者( 以下、CVA 患者) の歩容の特徴として非麻痺側で代償を認めることや、非対称性歩行がある。歩行は左右下肢の交互運動であり、後脚から前脚へと円滑な荷重移動の引き継ぎが行われ、両脚支持期がその役割を担っている。また、その役割を果たすためには、前脚・後脚それぞれの十分な機能や荷重要領が必要となる。今回、非対称性とStiff Knee Gait の歩行障害を認めたCVA 患者を担当し、歩容改善に向けて麻痺側Late Stance と非麻痺側EarlyStance の両脚支持期に着目し、課題指向型アプローチを行った結果、歩容改善が図れたのでここに報告する。
【対象】
理学療法評価(53 病日目)〈身体機能評価〉Brs:右上肢- 右手指- 右下肢/ V- V - V。感覚障害:正常。MAS:正常。ROM:制限なし。筋力:下肢(R/L)3~ 3+/5。FBS:40 点。FIM:96 点( 運動63 点、認知33 点)。MMSE:27 点。高次脳機能障害:なし。〈脳画像所見〉左放線冠を中心に梗塞巣を認め、皮質脊髄路と皮質網様体路の損傷が推測された。〈歩行評価〉歩行速度:0.57m/s、歩幅:43.5cm。麻痺側Late Stance での股関節伸展角度の減少により、遊脚期の推進力低下を認め、麻痺側Early Swing においてStiff Knee Gait を認めた。また、非麻痺側Early Stance において非麻痺側膝関節屈曲位での接地を認めた。
【方法】
本症例の麻痺側Early Swing での股関節屈曲角度の減少の要因は、麻痺側の腸腰筋や下腿三頭筋の筋力低下による股関節屈曲・足関節底屈モーメントの低下によるものであり、その結果として遊脚振子の形成が不十分となり、StiffKnee Gait が生じていると考えた。また、非麻痺側の膝関節屈曲位での接地の要因として、非麻痺側の下肢近位筋の無意識下での姿勢制御能力低下が考えられ、両脚支持期における麻痺側から非麻痺側への円滑な荷重移動の阻害因子になっていると考え、課題指向型アプローチを実践した。効果判定として、Honda 歩行アシスト計測機能を用いた麻痺側最大股関節屈曲・伸展角度(6 歩行周期の平均値)、歩行波形、歩行速度、歩幅を介入前後で比較した。また被験筋を麻痺側腓腹筋内側とし、NORAXON 社製筋電計テレマイオDTS を用いてサンプリング周波数1kHz にて、麻痺側Late Stance の6 歩行周期の平均筋活動を計測し、介入前後で比較した。
【結果】
Honda 歩行アシストによる麻痺側最大股関節屈曲・伸展角度について、介入前は屈曲:17.1°、伸展:8.7°であったが、介入後は屈曲:22.8°、伸展:13.3°であった。歩行速度、歩幅について、介入前は速度:0.57m/s、歩幅:43.5cmであったが、介入後は速度:0.97m/s、歩幅:52.6cm であった。麻痺側LateStance の腓腹筋内側の筋活動について、介入前は67.4 ± 4.16 μ V に対して、介入後は91.9 ± 5.64 μ V であった。介入後の歩行では、股関節伸展角度の向上により麻痺側振り出し速度が向上しStiff Knee Gait の軽減を認め、非麻痺側膝関節屈曲位での接地も改善した。
【考察】
介入後は、麻痺側Late Stance における腓腹筋内側筋活動の増加により、足関節底屈モーメントが増加したことで、麻痺側遊脚期の推進力向上と遊脚振子が改善し、麻痺側股関節屈曲・伸展角度が拡大したと考える。また介入後は、非麻痺側下肢近位筋の姿勢制御能力の向上が図れ、非麻痺側Early Stance における膝関節屈曲位での接地が改善し、麻痺側から非麻痺側への円滑な荷重移動が行えるようになった。両脚支持期の麻痺側・非麻痺側の課題改善が、CVA 患者の特徴であるStiff Knee Gait と非対称性の歩行の改善に繋がったと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ口頭にて本報告の内容、個人情報の保護を十分に説明し同意を得た。