九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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Redcode が歩容改善に奏功したTHA 術後の症例
*荒木 真己
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キーワード: Redcode, 疼痛, 歩行
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p. 122

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抄録

【はじめに】

今回、寛骨臼形成不全により両側変形性股関節症を呈し、左側へ人工股関節置換術(THA)を施行した50 歳代女性の症例を担当する機会を得た。手術の5 年前から1 本杖を両側に使用し歩行は自立していたが、疼痛が強く、また歩行時の体幹の代償運動などがみられ、運動効率が悪く長距離の歩行は困難であった。入院時のデマンドは独歩自立および歩容の改善が挙げられ、ニードとして、病態の理解および歩容の改善をあげ、疼痛の誘発に注意して、Redcode などを用い良好なアライメントでの運動を行い、歩容に改善が見られたため報告する。

【方法】

股関節周囲の筋緊張の調整及び筋力強化を目的としてRedcode を用いてアプローチを実施した。その他のアプローチとして、筋力訓練、NUSTEP、補高の調整、歩行訓練を行った。また、入院時から自主訓練を指導し状態に応じて負荷量を調整し退院まで継続して実施した。評価項目として、触診、疼痛、筋力、関節可動域、6 分間歩行、10m歩行を挙げ、入院時と退院時に測定を実施した。

【結果】

股関節周囲へのアプローチとしてRedcode を用いた筋力訓練及び関節可動域エクササイズを中心に行い、以下の評価項目(初期/ 最終)にて改善がみられた。左右内転筋群の異常筋緊張は改善、右股関節内転筋群の圧痛(NRS7/10 / NRS0/10)、股関節周囲の筋力(右股関節屈曲MMT2/MMT4、外転MMT2/MMT3)、関節可動域(右股関節屈曲65 度/95 度、伸展-5 度/5 度、外転0 度/10 度)、6 分間歩行(143 m休憩2 回/350 m休憩なし)、10 m歩行(16.28 秒28 歩/9.98 秒19 歩)。また、歩行時の分回し及び体幹の側屈、後屈は軽減、歩幅が拡大し歩行速度に向上がみられ、連続歩行距離の拡大が図れ、退院時には30 分以上の屋外歩行が可能となった。

【考察】

Redcode を使用する事で、努力性要因を排除し、低負荷での運動を繰り返し行ったことで、股関節中殿筋や屈筋群を筋力強化し、内転筋群の過緊張改善に繋がったと考える。また、脚長差を補高で調整し、筋力向上及び関節可動域が拡大したことにより、歩容が改善したことで歩行時の運動効率が改善し歩行スピード及び歩行距離の拡大に繋がった。リハビリの際は疼痛に特に配慮し、疼痛を出さない訓練プログラムを実施したことで、疼痛が遷延しなかった。

【まとめ】

今回、THA を施行し独歩自立を希望される患者を担当し、ニードとして病態の理解及び歩容改善を目的にアプローチを実施した。Redcode を訓練に取り入れ、疼痛を誘発することなく段階的な訓練アプローチを行ったこと、スムーズな合意目標の形成や歩容改善へ寄与した。理学療法アプローチにおいて、適切な負荷量や良好なアライメントでの運動を行うことで、疼痛遷延を予防し、歩行安定性の向上や早期退院に繋がっていく。

【倫理的配慮,説明と同意】

研究の実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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