九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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異常姿勢に対して体幹装具トランクソリューションを用いて歩容改善を図った被殻出血の一症例
*丸田 健介
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p. 14

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抄録

【はじめに】

近年、脳卒中片麻痺患者におけるトランクソリューション(以下TS)装具の有用性が示されている。今回、右被殻出血により左麻痺を呈した患者にTS を試行した。歩容改善に着目し良好な結果を得られたため考察を加え以下に報告する。

【症例】

70 代男性 身長171cm 体重71kg BMI24.6 診断名:右被殻出血 既往歴:労作性狭心症、マロリーワイス症候群現病歴:x日左上下肢麻痺・呂律困難・右共同偏視で救急搬送。右被殻出血を認め、保存的加療された。x +13 日にリハビリ継続目的に当院(回復期リハビリテーション病棟)へ入院された。

【評価(入院時→退院時)】

上田式12 段階片麻痺機能検査:上肢7 → /12 下肢8 → 11/ 手指6 → 12 MMT:非麻痺側4~5 → 5 FIM:52 点→ 123 点 アライメント:矢状面における骨盤後傾、胸椎後弯、頭部前方位(スウェイバック姿勢)→著変なし 10m 歩行:実施困難→ 14 歩、5.7 秒 6 分間歩行:実施困難→ 425m 休憩なし

【問題点】

左片麻痺、体幹筋力低下、スウェイバック姿勢

【歩行の経過】

x +15 日目:長下肢装具を使用した歩行訓練。後方から体幹の支えと振り出し最大介助が必要。x +28 日目:金属支柱付短下肢装具へカットダウンし平行棒内歩行訓練、杖歩行訓練並行して実施。麻痺側の膝折れは消失。麻痺側振り出しを軽度アシスト、麻痺側立脚期に骨盤帯の動揺の修正。x +39 日目:ゲートソリューションデザイン短下肢装具(以下GSD)を使用しての歩行訓練へ移行。スウェイバック姿勢により股関節伸展不十分。x +57 日目:TS+GSD を使用しての歩行訓練、独歩、装具なしでの歩行訓練を並行して実施。病棟移動自立に至ったがスウェイバック姿勢継続してみられる。TS 使用前はスウェイバック姿勢だが、TS 装着下での歩行訓練直後は改善。X+82 日目:屋外歩行訓練、応用歩行訓練開始。意識下では正中位での姿勢で歩行可能。X+137 日目:自宅退院。

【考察】

今回、発症3 ヶ月の脳卒中患者に対し、TS の使用を試みた。先行文献によると、麻痺による体幹機能低下に対して有用性を示すものがあった。本症例は麻痺の改善に伴い、監視レベルでの歩行を獲得したものの、スウェイバック姿勢であり股関節伸展が不十分な歩容が残存していた。そこで、TS の機能を利用し、骨盤前傾位での歩行訓練を繰り返し行い、正しいアライメントでの歩行学習を図った。TS は継ぎ手の発揮する力が上部支持体を通して体幹部を引き起こすような効力を与え、かつ腹筋の活動を高めることができる。これにより前かがみ姿勢の矯正、腹筋活動の維持などに効果を発揮することができる。また、TS に加えGSD を装着して歩行訓練を行った。TS とGS の併用によって、骨盤前傾を保持したまま歩行周期におけるLR を迎えられ、GSD でのロッカーファンクション機能がより効果的に作用し、適確な運動学習が繰り返された効果で、歩行能力の向上に至ったと考える。今回の経験から病前からの異常姿勢是正にはTS が適応になると考えられた。今後はTS 使用群、非使用群での歩行能力の変化など、実績を積み上げてTS の効果を実証していく。

【倫理的配慮,説明と同意】

本発表をするにあたり、世界医師会によるヘルシンキ宣言の勧告に従い、対象者へ説明行い同意を得た

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