主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 20
【はじめに】
地域包括ケアシステムの構築、市町村の一般介護予防事業の充実・強化のための取組みの一つとして地域リハビリテーションは大きな役割を担っているが、地域リハビリテーションを実践する組織として地域リハビリテーション広域支援センターが存在する。長崎県の北部に位置する平戸市、松浦市、佐々町を中心とした地域にて活動する県北地域リハビリテーション広域支援センターでは今回、長崎県県北保健所圏内の協力施設に所属するリハビリテーション専門職をはじめとした関係者にアンケートを実施し、現状の実態把握を含め、リハビリテーション専門職の可能派遣な地域活動への参加状況について調査した。
【方法】
各協力施設の施設長、所属長、在籍中の全セラピストを対象に、それぞれ当センターにて作成したアンケートを配布し回収した。回収後、設問毎の結果を集計した。
【結果】
施設長を対象としたアンケートでは、全13 施設中9 施設の施設長から回答が得られた。回答が得られた全ての施設長より協力経験があるとのことで、今後の地域活動支援事業への協力も可能とのことであった。所属長を対象としたアンケートでは、全13 施設10 施設から回答が得られた。派遣可能なセラピスト数はPT21 名、OT16 名、ST3 名の計40 名で、月1 回の派遣が可能であるという回答が最も多かった。その一方で、派遣には業務上支障が出る旨の意見も上がっていた。個人向けのアンケートでは、PT80 名、OT35 名、ST9 名の計124 名から回答が得られた。地域活動への参加経験は全体の52.4%が「あり」と回答し、「あり」と回答した職種別の割合ではPT46.3%、OT60.0%、ST77.8%であった。また、経験年数別での地域活動への参加の有無では、1 ~10 年目では69 名中35 名(56.1%)、11 年目~ 20 年目では36 名中17 名(47.2%)、21 年目以上では17 名中13 名(76.5%)が地域活動への参加があるとの回答であった。
【考察】
地域活動への参加に関しては、各施設がこれまでも協力的であり、今後も同様に参加を継続していく姿勢が見受けられた。しかし、地域活動へ参加したい気持ちがあるが参加出来ていないセラピストも存在していることも同時に判明した。これは、施設によっては人員が限られており、業務外の活動が困難であること、派遣される人員が固定化されていること等が考えられる。従って、派遣しても人員数が維持出来る施設に地域活動が偏りがちになる傾向が生じている。また、経験年数が10 年以下のセラピストが半数を占めており、地域活動、地域活動支援事業を含めた「地域リハビリテーション」に対する認識がまだ十分ではないことが考えられる。
【まとめ】
現在、地域活動へ参加されているセラピストの方々には、派遣体制やアナウンスの方法等の意見交換を継続していくことで、引き続き協力して頂けるように広域支援センターを中心に取り組んでいかなければならない。更に、経験年数が少ないセラピストへの人材育成が必要となってくるが、介護予防推進リーダーや地域ケア会議推進リーダーの履修や経験を有するセラピストによる研修会を開催することで、地域リハビリテーションの概念や意義を理解してもらうことが期待出来る。リハ専門職として、地域のニーズを把握することは地域包括ケアシステムの構築に向けて不可欠であり、セラピストが地域活動へ参加しやすい環境を整えることが必要である。
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケートにて取得した情報については本調査のみにて使用し、個人情報保護の観点から第三者に情報提供することは一切しない。