主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 33
【はじめに】
人工股関節全置換術(THA)術後症例の理学療法において,歩行能力の改善は極めて重要な課題である.THA 術後症例の歩行パターンの特性について,股関節機能の低下を足関節の力発揮を増加させることで代償する傾向にあり,このような股関節と足関節の代償的制御は,ADL 能力に悪影響を及ぼすことが指摘されている.したがって,臨床上,股関節と足関節の協調関係に立脚した介入が重要であると思われるが,THA 術後症例の歩行パターンを改善するための具体的な理学療法は十分に確立されていない.今回我々は,歩行のMidStance(MSt) からTerminal stance(TSt) にかけて,顕著な股関節伸展機能の低下と,足部での過度な蹴り出しを認めた症例を経験した.本症例に対して,運動学的/ 筋電学的特性を定量的に分析し,その代償的制御に応じた一連の理学療法を実践したことで歩行パターンの改善に至ったため,以下に報告する.
【方法】
症例は60 歳代の男性であり,40 歳代より続く右股関節痛に対しTHA を施行した.術後4 週時点でFIM 歩行は7 点(独歩自立)であった.歩容は術側のMSt からTSt にかけて股関節伸展角度が狭小化しており,さらに足関節底屈による過度な蹴り出しを認めた.また,「長い距離を歩くと疲れやすい」と内省が得られた.歩行計測は,三次元動作解析装置(KISSEICOMTEC 社製) とワイヤレス筋電図センサー( 追坂電子社製) を用いて,快適速度でのトレッドミル歩行を計測した.解析項目は,運動学的指標として術側のTSt における股関節最大伸展角度と足関節最大底屈角度を算出した.筋電図学的指標としてMSt以降の術側の大殿筋と腓腹筋の積分値を求めた.尚,測定は介入前(術後4週時点),介入4 週間後に実施した.統計解析は,介入前後における各パラメータの比較について,Wilcoxon signed-rank test を用いた.
【理学療法】
レッドコードを用いた股関節伸展の関節可動域訓練,殿筋群の筋力増強訓練を実施し,術側股関節の可動域拡大と筋力強化を図った.歩行練習では,殿筋群の活性化に対し,Katoh らの方法に基づいた教示を行い,Initial Contact(IC)からLoading response(LR)時の踵接地の意識付けを行った.底屈筋群の抑制に対しては,Tateuchi らの方法に基づいた教示を行い,MSt からPre swing(PS)時の足関節での過度な蹴り出しを抑制する意識付けを行い,股関節と足関節の相互関係を利用することで,代償動作の修正を図った.介入期間は4週間とした.
【結果】
介入前と比較し,介入4 週間後において股関節最大伸展可動域の有意な拡大(p
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象には十分な説明を口頭で行い,同意を得た.