九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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周術期大腸がん患者の術後在院日数と関連する要因の検討
*小林 道弘*槌野 正裕*荒川 広宣*岩下 知裕*堀内 大嗣*山田 一隆
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p. 49

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抄録

【はじめに】

2010 年4 月の診療報酬改訂により、「がん患者のリハビリテーション料」が新設され、がん患者に対するリハビリテーション( リハ) の重要性が認識されている。がんに対する外科領域では術後の安静が長期化すると、呼吸循環系や骨格筋の廃用を生じる。そのため、早期から離床を図り術後合併症、廃用を予防し、早期退院に努めることが周術期リハとして重要となる。しかし、大腸がん患者における術後在院日数の要因については明確になっていない。そこで、今回周術期大腸がん患者の術後在院日数と関連する要因を検討した。

【対象と方法】

2019 年5 月から2020 年3 月に大腸がん根治術を施行した67 例( 男性39 例、女性28 例、平均年齢62.7 ± 13.6 歳) を対象とした。対象の部位内訳は回盲部3 例、結腸16 例、S 状結腸9 例、直腸39例であった。対象者の術後在院日数の中央値を算出し、標準群(21日未満:男性18 例、女性15 例) と遅延群(21 日以上:男性21 例、女性13 例) に分類した。術前要因( 年齢、prognostic nutritionalindex[PNI]、skeletal muscle mass index[SMI])、手術要因( 術中出血量、手術時間、術式[ 腹腔鏡or 開腹])、術後要因( 術後合併症の有無[Clavien-Dindo 分類I以上]) を電子カルテより後方視的に抽出した。身体機能要因は、握力、片脚立位時間、6 分間歩行距離を術前と術後1W で測定し、術前に対する術後1W の変化率を算出し用いた。統計学的検討は、Mann-Whitney U 検定、カイ2 乗検定を用い、有意水準5% 未満で比較した。

【結果】

結果値は、標準群:遅延群で記載する。年齢67(23-85) 歳:64(32-82) 歳、PNI48.1(37-59.2):48.15(33.7-56.4)、SMI6.65(4.8-8.3)kg/m2:7.1(3.7-9.2)kg/m2 では有意差を認めなかった。術中出血量30(3-235)ml:357(3-1738)ml(p < 0.01) と手術時間235(143-404)分:277(87-440) 分(p < 0.05) はいずれも遅延群で有意に高値であった。術式は、開腹1 例(3%)、腹腔鏡32 例(97%):開腹19 例(56%)、腹腔鏡15 例(44%) で有意差(p < 0.01) を認めた。握力変化率98(77-112)%:94(57-160)%(p < 0.05)、片脚立位時間変化率100(25-360)%:100(22-180)%(p < 0.05)、6 分間歩行距離104(79-154)%:88(47-200)%(p<0.05)はいずれも遅延群で有意に低値であった。合併症の有無は、合併症発生率27%:62% であり有意差(p < 0.01)を認めた。

【結語】

過去の研究でも周術期大腸がん患者で高侵襲手術症例は、術後の骨格筋量低下を生じやすいことを報告している。今回の結果からも、手術要因は身体機能回復率や合併症発生率に影響を与え、術後の在院日数を長期化している一因となっていることが示唆された。当院の周術期リハは、ドレーン類が全抜去された日を基準に、レジスタンストレーニングと有酸素運動を開始している。しかし、高侵襲な手術症例ほどより早期から機能回復訓練を行うことで、術後在院日数の短縮につながるのではないかと予測される。今後、症例数を蓄積し検証していくことで、周術期リハのパスを見直していきたいと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理委員会の承認を得ている。( 承認番号20-07)

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