主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 48
【はじめに】
心疾患にフレイルを合併すると生命予後が不良であることは周知の事実であるが、心疾患患者の約30%が抑うつ状態、不安などを引き起こし、死亡や心イベント発生など予後に大きく影響している。今回、僧帽弁閉鎖不全症による慢性心不全フレイル患者の術後心臓リハビリテーション( 以下心臓リハビリ) を担当し、経過の中で生じたうつ傾向により一時心臓リハビリを中断したが、多職種介入が奏功しフレイル改善、復職に至った症例を担当したため報告する。
【症例紹介】
70代男性。重度僧帽弁閉鎖不全症に対し他院にてMICS-M V P 施行したADL 自立の患者。職業は建築業(1 年ほど休職中)。術後20日目に当院へ回復期心臓リハビリ目的に転院となった。
【経過】
術後50日目に当院退院し、引き続き外来心臓リハビリに移行した。術後80日ほど経過した頃から原因不明の労作時倦怠感、胸部症状、食欲不振がみられ次第にうつ傾向へ。症状に伴う不安感から頻回受診などあり。外来心臓リハビリを一時中断し入院精査したが明らかな心不全傾向は認めず、冠動脈病変も否定。その後一定期間の自宅療養後に外来心臓リハビリを再開した。その後原因不明の症状は軽快し非監視下運動療法へ移行。改訂J-CHS 基準にてフレイルからロバストへの改善を認めた。CPX再検し復職へ。
【考察】
今回、術後の精神的不安定な時期を脱し心臓リハビリ再開、フレイルの改善、復職まで可能となった症例を経験した。本人の手術に対する症状改善の期待度が高かったことも術後の精神的落胆に強く影響した印象であったが、看護師、薬剤師、心理師など多職種連携による心不全教育や精神的ケアだけでなく、運動療法自体もうつ傾向改善に寄与した一因であったと推察する。また数値的変化を提示することで本人のセルフエフィカシーを高めることも、復職に向けたモチベーション維持に効果的であったと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本演題に関して、対象者に十分な説明を行い書面による同意を得た本演題に関して、筆頭演者に開示すべき利益相反はありません