主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 66
【はじめに・目的】
本邦の高齢化に伴い,入院患者においても低栄養状態の患者が増加の一途を辿っている.中でも,低栄養は筋量や骨量を低下させ,身体機能を低下させるとともに,運動療法の負荷量を調整する上でも考慮すべき因子とされている.そして,低栄養にも急性・慢性炎症や飢餓など様々な病因があることから,2018 年に低栄養の診断基準であるGLIM 基準が発表され,低栄養の重症度ならびに病因別に検証する必要性が示された.しかし,これまで低栄養状態の重症度が身体機能におよぼす影響についてはほとんど検討されていない.本研究では,一般急性期病院に入院した地域在住高齢者を低栄養の重症度ごとに層別化し,それぞれの特徴ならびに身体機能について調査した.
【方法】
本研究は後方視的調査であり, 2020 年4 月~ 2021 年2 月までに当院の内科に入院し,リハビリテーションを実施した65 歳以上の患者206 名を対象とした.調査項目は,基本属性(年齢,性別,疾患名,介護保険認定度,入院前の移動手段,入院期間),栄養状態評価(BMI, SGA, GNRI,CONUT 指数,下腿最大周径),ならびに身体機能(握力,10MWT)とした.そして,GLIM 基準をもとに,入院時の一次栄養スクリーニング(SGA,GNRI,CONUT 指数)に1 つも該当しない患者をリスクなし群とし,その他の患者を入院時のBMI を基準に軽度群,中等度群,重度群の3 群に振り分け,基本属性ならびに入院時・退院時の身体機能について4 群比較を行った.統計解析には,χ 2 検定および一元配置分散分析を採用し,事後検定にはBonferroni 法を用いた.有意水準は5% 未満とし,欠損値処理は行わなかった.
【結果】
対象者の平均年齢は83.1 ± 7.6 歳であり,リスクなし群44 名,軽度群66名,中等度群37 名,重度群59 名であった.基本属性では,軽度群と重度群の年齢のみ有意差が認められ,入院前の状態は4 群間に有意差を認めなかった.下腿最大周径は,入院時・退院時ともに重度群と他の3 群間に有意差を認めた.一方で,握力については入院時・退院時ともに有意差を認めなかった.また,10MWT についても入院時・退院時ともに4 群間に有意差を認めなかった(入院時; リスクなし群:21.0 ± 10.1,軽度群:20.9 ± 7.7,中等度群:19.1 ±15.8,重度群:18.5 ± 5.7,p=0.691;退院時; リスクなし群:13.5 ± 5.6,軽度群:12.6 ± 4.3,中等度群:12.1 ± 4.7,重度群:18.1 ± 14.9,p=0.164).
【考察】
本研究の結果,対象者の78.6%が低栄養状態であり,そのうち36.4%が重度低栄養状態であったことから,一般急性期病院に入院する内科患者における栄養評価の重要性が示された.重度群の下腿最大周径は入院時から減少しており,退院時も同様の傾向を示すことから,これは入院前生活における低栄養状態に起因した筋量の低下がその要因として推察される.一方で,入退院時ともに4群間の身体機能には有意差を認めず,これまでの先行研究とは異なっていた.これは,対象者が先行研究よりも高齢であることから,身体機能の低下を来した患者が多いことが影響した可能性がある.しかし,他の3 群とは異なり,重度群では10MWT の改善を認めなかった.つまり,重度群の身体機能低下は筋量の低下に起因している可能性があり,入院期間中の改善が得られにくい可能性が示唆された.ただし,身体機能についての欠損値が多いことから,今後はこれらを補填してさらに検証することで,低栄養の重症度に応じた理学療法介入戦略をより具体的に検討していく必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した.データは匿名化処理を行い,個人情報保護に十分配慮して管理した.