九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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生活機能向上連携加算における理学療法士のマネジメントとしての役割
通所介護施設における活動報告
*吉岡 元*山下 諒太*柳武 隆博
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p. 7

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抄録

【目的】

生活機能向上連携加算とは、自立支援・重度化防止に資する介護を推進するため、通所介護等の事業所の職員と外部のリハビリテーション専門職が連携して、機能訓練のマネジメントをすることを評価する加算である。加算の算定によるメリットが多く確認されている一方で算定率は低く、平成30 年度介護報酬改定にて算定要件が緩和・拡大された令和元年度においても全事業所・施設ベースで3.1%、通所介護では3.4%といずれも算定率が低い状況である。本加算に関する報告も、アンケートによる事業所や利用者、ケアマネジャーの意見に関する報告や、介入による利用者の変化の報告は散在するが、実際どのような介入を行っているかを示したものは少ない。当法人では平成30 年6 月より通所介護をはじめとする法人内の事業所にて、生活機能向上連携加算を算定しており現在3 名のセラピストが加算に関与している。そこで本加算に従事するセラピストの活動内容を報告することで、本加算の認知度を向上させ、理学療法士の活躍の場の増加につなげたい。

【方法】

2020 年4 月から同年6 月、法人内の通常規模型通所介護2 施設、特定施設入居生活介護2 施設の訪問を行った。そのうち、通所介護事業所2 施設において、利用者の評価を行い、事業所での介入の変更などについて助言を行った際に、その内容を記録し、内容が類似するものをグループ分けした。なお同様の内容が5 件以上あったものを抽出することで助言の内容の整理・把握を行った。

【結果】

期間中434 名利用者に対し評価・助言を行った。助言内容をグループ分けした結果、事業所で行う機能訓練についてが77 件、自主訓練指導が29 件、歩行補助具についてが20 件、事業所内移動の注意点が18 件、歩行介助方法についてが8 件、送迎についてが5 件、その他分類できなかったものが27 件であり、機能訓練やリハビリ内容に関する助言が多かった一方で、利用者や職員から個別に相談を受けた件数も多かった。

【考察】

平成30 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和元年度調査)では、通所介護で生活機能向上連携加算を算定することにより、事業所・施設側のメリットとして「機能訓練指導員のケアの質が向上した」、「利用者の状態や希望に応じたケアの機会が増えた」が挙げられ、利用者のメリットとして「リハ専門職等が携わるため利用者・家族が安心した」、「利用者の身体機能の維持・向上につながった」、またケアマネジャーの意見としてこれらに加え、「ADL やIADL の維持向上に関する計画の内容が改善した」、「連携によるケアプラン内容の見直しへの好影響があった」とされる。本加算における理学療法士の役割として、利用者に対し「個別的なリハ」という関りのみでなく、「リハビリテーションマネジメント」としての関りが求められる。今回の報告のように利用者の評価・助言を行い、事業所での機能訓練のマネジメントを行った結果、事業所の職員・利用者・ケアマネジャーにとってよい効果があったと考えられる。

【まとめ】

通所介護事業所における生活機能向上連携加算の活動実態について調査を行った。外部のリハビリテーション専門職による機能訓練のマネジメントとして通所介護事業所にて機能訓練や歩行介助方法、歩行補助具などについて助言を行うことで、事業所の職員・利用者・ケアマネジャーに利益があり、理学療法士の役割の重要性が確認できた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本調査を行い集計するにあたり、ヘルシンキ宣言・人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従い、個人名の匿名化を行い記録することで個人が特定できないようにした。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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