主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 6
【目的】
健康寿命の延伸のため,高齢者の予防・健康づくりを推進することが重要とされ,各地域で一般介護予防事業が展開されている.この一般介護予防事業では,通いの場としての機能が重要とされる一方で,介護・フレイル対策を一体的に実施することが必要である.現在介護予防事業では,事業参加により一定の介護予防効果を認めることが明らかになっている.一方で,介護予防事業に参加した高齢者の運動機能や精神機能,生活機能,転倒リスクについて,フレイルを視点として検討した報告は少なく,その特徴や経時的な変化も明らかとなっていない.本研究では,一次予防事業に3 年間継続して参加した女性高齢者のフレイルの有症率や運動・精神・生活機能の特徴を明らかにすることとした.
【方法】
対象は,H18 年からH26 年の間に一次予防事業に3 年間継続して参加した65 歳以上の地域在住の女性高齢者338 名(平均年齢73.5 歳)とした.評価項目は転倒アセスメント,Geriatric Depression Scale( GDS),基本チェックリスト(KCL),運動機能(握力,片脚立位時間,椅子起立時間,Time up andGo)とし,各評価項目を年度の初回事業日に評価した.なおフレイルの判定にはKCL を使用し,初年度と3 年目の合計得点により,全対象者をRobust- Robust 群(RR 群)・Robust -Frail 群(RF 群)・Frail- Robust 群(FR 群)・Frail-Frail 群(FF 群)の4 群に分類した.分析は,各群の群内比較として事業参加初年度と3 年目の各評価項目をWilcoxon の符号付き順位検定を用いて有意差の検定を実施し,またRF 群とFR 群では,年度ごとの評価項目の変化について反復測定分散分析を実施した.
【結果】
初年度のフレイルの有症率は12%であり,3 年目は11%であった.4 群の内訳は,RR 群は272 名,RF 群は23 名,FR 群は26 名,FF 群は16 名であった.初年度と3 年目の群内比較の結果,RR 群では,転倒アセスメント・GDS・右握力・椅子起立時間・TUG において初年度と比較し3 年目は有意に低値を示し,片脚立位時間は有意に高値を示した. FR群ではRR群と同様の傾向を示したが,握力には有意差を認めなかった. KCL の下位項目では,RF 群は運動項目,認知機能,精神機能において初年度と比較し3 年目は有意に高値を示し,FR 群では運動項目,口腔機能,閉じこもり,認知機能,精神機能において3 年目には有意に低値を示した.FF 群では,運動機能のみ3 年目に有意に高値を示した.RF 群,FR 群の反復測定分散分析の結果では,RF 群は,KCL の初年度と3 年目,2 年目と3 年目の間に有意差を認め,下位項目の運動項目,認知機能,精神機能では初年度と3 年目の間に有意差を認めた.FR 群では,転倒アセスメント,KCL,椅子起立時間,TUG,KCL の下位項目の運動項目,口腔機能,閉じこもり,認知機能,精神機能おいて初年度と比較し2 年目,3 年目には有意差を認めた.GDS においては初年度と3 年目、片脚立位時間では初年度と2年目の間で有意差を認めた.
【結論】
一次予防事業に継続して参加した高齢者では,フレイルの有無にかかわらず,運動機能や精神機能は維持されることが示唆され,さらにRobust やFrailの維持・改善には運動機能の改善が重要であると考えられた.またFrail からRobust へ改善する高齢者は,初年度からの1 年間の間に運動機能や転倒アセスメント,KCL は改善傾向となり,3 年目にも維持されることが示唆された.その結果,介護予防事業参加の高齢者には初年度の効果判定が重要で,その結果により,各対象者に沿った介護予防事業プログラムを検討していく必要性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿って実施し,所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した.