主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 89
【はじめに】
当院における筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)に対する治療はリルゾール内服とエダラボン点滴治療を定期的に行っている.エダラボン治療は1か月のうち10 日間実施となるため,その間は当院へ入院し,その後また自宅退院となる.これを1 クールとして治療を行い,理学療法(PT)は入院期間である10 日間実施している.そのため入院中の身体活動量(活動量)は確保できているが,自宅生活における活動量は聴取でしか確認できず,実際どの程度活動できているかは不明な点が多い.またALS 患者の実際の活動量を測定した研究は少なく,実際の活動量を測定することはALS 患者を支援していくうえでは非常に重要であると考える.そこで本研究は,入院・自宅生活の具体的な活動量を調査し,進行性の疾患であるALS 患者に対する支援を模索することを目的とした.
【症例提示】
40 歳代の男性.X-12 か月に右肩疼痛が出現し,他院にて通院.症状持続し,X-7 か月には右手での書字や箸操作時に違和感を自覚.その後も症状が進行したため,当院へ精査入院し,X 日にALS の診断となった.
【評価方法】
活動量は3軸加速度計(ActiGraph Link GT9X)を体幹に装着して測定した.評価は徒手筋力検査(MMT),握力,四頭筋力,ALS 機能評価スケール(ALSFRS-R),体成分分析装置(Inbody)を用いた.なお,Inbody はX 日に当院導入されておらず初期評価においては計測できなかった.
【理学療法初期評価(X 日)】
MMT:右上肢3-4,右手指1-2,左上肢5,体幹5,両下肢5,握力:右13.0 ㎏,左44.9 ㎏,四頭筋力:右63.0 ㎏,左55.7 ㎏,ALSFRS-R:44 点
【中間評価(X 日+18 か月)】
入院生活1 日平均活動量869192,MMT:右上肢2-3,右手指1-2,左上肢4,体幹5,両下肢5,握力:右2.5 ㎏,左22.0 ㎏,四頭筋力:右57.5 ㎏,左53.1 ㎏,ALSFRS-R:43 点,Inbody:体重70.8 ㎏,全身筋肉量51.4,体脂肪量22.7%
【自主トレーニング指導前の自宅生活:(X 日+20 か月)】
退院生活1 日平均活動量:444096,Inbody:体重70.4 ㎏,全身筋肉量48.1㎏,体脂肪率27.3%
【自主トレーニング指導後の自宅生活:(X 日+22 か月)】
退院生活1 日平均活動量:552555,MMT:右上肢2-3,右手指1-2,左上肢4,体幹5,両下肢5,握力:右2.5 ㎏,左22.0 ㎏,四頭筋力:右57.5 ㎏,左53.1 ㎏ ,ALSFRS-R:43 点,Inbody:体重69.6 ㎏,全身筋肉量49.4 ㎏,体脂肪率24.4%
【考察】
本症例はALS 発症から20 か月が経過している.右上肢に加え,左上肢の筋力低下も進行してきている.日常生活は左上肢にて行っており,移動は独歩で自立している.今回の調査期間におけるInbody の数値やALSFR-S の著明な低下は認められなかった.しかし活動量は,入院生活と自宅生活において著明な差が生じていることが確認された.ガイドラインにおいて有酸素運動や,中等度から軽負荷筋力強化などの有効性が報告されているため,自宅にて実施可能である自主トレーニング(自主トレ)を入院中より指導した.自主トレ指導後の自宅生活では,進行性の疾患であるにも関わらず活動量の向上を認めたため,具体的な活動量の測定や自主トレを指導し実施することは身体機能の維持につながったと考える.本症例の趣味は多彩で山登りやドライブ,旅行であったが,病状の進行に伴う不安や自己効力感の低下に伴い,活動範囲が狭小化し活動量の低下が生じていた.そのため今回具体的な活動量を計測し,自主トレを指導することは症例の生活を支援いくことにおいて重要であったと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
発表に際して,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た.