九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-05
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口述1
高齢弁膜症術後患者の100 m歩行獲得の遅延と退院 1 年後の予後に関する調査~心血管事故による再入院及び死亡率について~
安永 直騎
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抄録

【はじめに】

心臓手術後の早期リハビリは術後合併症の予防、入院日数の短縮など良い影響を与えることが多くの文献で報告されている。2012 年改訂の心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインは、4 ~5 病日に病棟内歩行(100m)を行うことが術後リハビリ進行の目安とされていた。2021 年改訂された同ガイドラインにおいて、病棟歩行(100 m) の目安は3 ~4 病日に短縮されたものの、冠動脈バイパス術を除いた弁膜症術後など心臓手術後患者における長期予後改善のエビデンスは報告されておらず、術後リハビリの遅延が退院後の生活にもたらす影響は分かっていない。そこで、当院における弁膜症術後患者の100 m歩行獲得の遅延と退院1 年後の予後について調査した。

【目的】

高齢弁膜症術後患者の100 m歩行獲得の遅延が術後1 年の予後に及ぼす影響を検討すること。

【方法】

調査期間は2015 年4 月1 日から2020 年3 月31 日とし、65 歳以上で待機的に弁膜症手術を受けた61 名(平均75.1 歳)を解析対象とした。術後100 m歩行獲得日数が5 日以内を「早期群」、6 日以上を「遅延群」と分類し、周術期、退院時データ、退院1 年後の予後を比較検討した。調査方法は当院診療録から後方視的に情報収集を行った。退院1 年後の予後は心血管事故による当院への再入院、死亡の有無とした。

【結果】

遅延群は42 名(69%) であった。遅延群において術後初回歩行開始日数( 早期群:2 ± 0.8 日vs 遅延群:4 ± 1.1 日)、在院日数( 早期群:14 ±3.7 日vs 遅延群:20 ± 7.8 日) は有意に延長しており、術後合併症罹患率( 早期群:36.8%vs 遅延群:76.2%) も有意に高かった。退院1 年後の予後である再入院率( 早期群:5.3%vs 遅延群:7.1%)、死亡率( 早期群:5.3%vs 遅延群:0%) は有意差を認めなかった。また、退院時のBI( 早期群:100 点vs 遅延群:100 点)、自宅退院率( 早期群:84.2%vs 遅延群:81.0%) も有意差を認めなかった。

【結論】

高齢弁膜症術後患者の術後リハビリが遅延して在院日数が延長しても退院時のADL、自宅退院率、退院1 年後の再入院率、死亡率に差がないことが示唆された。また、今回の調査は術後リハビリの遅延と術後合併症の発症が示唆されたが、因果関係についてまで言及出来なかった。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づいて概要を対象者に説明し,同意を得て実施した。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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