九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題18[ 教育・管理運営① ]
隔離療養下での重要なリハビリテーション:管理と実践 ~新型コロナ待機ステーションの経験から~
O-103 教育・管理運営①
安里 幸健亀谷 勇上地 誠之
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キーワード: 新型コロナ, 隔離療養, 離床
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p. 103-

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抄録

【はじめに】 災害時医療下でのリハビリテーション実施は、「(人的・物的)最小資源で、即時最大効果」と考える。

 沖縄県新型コロナ入院待機ステーションで、リハビリテーション(以下、リハビリ)を立ち上げ運営する経験を得たのでその活動と成果を報告する。

【活動目的】 沖縄県での新型コロナ第7波は10万人/月を超える新規患者数が発生し、入院待機ステーションにおいても患者数はひっ迫し解熱後もADL低下にて自宅に退所できない患者が増えた。そこで、円滑な自宅退所を目的にリハビリが導入された。

【活動内容】

①発足から実施内容の検討

*現状把握:要対象者の状況、ケアの状況

*本部確認:理学療法士へのニーズ、介入目的、目標を話し合い方針決定

ADL視点で退所可能者の選定、入所継続者の体力・活動面向上→自宅退所

*優先順位の選定(可能な範囲で「しないこと」も決める)

②業務量推察から必要人員を試算し、セラピストを招集

*招集は広報が重要(内容・報酬・保証などを明確に→県士会など活用し広報)

*JRATやDMATの活用も考えられる

③実践(介入実施→効果の確認→マニュアル化→傾向性の変化を把握→PDCAサイクル)

*経過に応じ変化する待機ステーションの状況と理学療法士の役割を押さえる

④チーム力強化(オリエンテーション、シフト作成、情報共有の仕組み作り)

【活動経過】

・第7波のひっ迫時:自宅にすぐに返せるかの活動能力評価最優先、離床・ADL実践

 効果:リハビリ導入にて24時間以上の長期入所者の自宅退所率向上

・第7波以降の患者減少時:バッファー機能を担い入所期間の長期化、リハビリ支援継続

 効果:自宅退所や搬送元への転帰は、一定水準維持

 離床やADL実践を日常に近い形で実践、不穏や認知症予防への取組みも重要視

【まとめ】 今回、隔離療養を強いられる新型コロナ入院待機ステーションでのリハビリの立ち上げと実践の経験を通し、重要と感じたのは、

ⅰ)不穏・せん妄対策:不安を和らげる(声掛け、傾聴、歩み寄り、説明など)

ⅱ)離床:特に排泄をトイレで行うことは「運動面」、「自尊心・モチベーション」の両方で重要。

ⅲ)日常の再現:環境(オープンスペース)、生活のリズム、コミュニティ

の3項目を実践することである。

 新型コロナ入院待機ステーションは、隔離療養という特殊な環境であること、また災害医療として通常の医療・介護保険下で実践されるリハビリとは資源環境が十分でないこと。リハビリテーションが必要になる対象者が、高齢者になりやすいことから、上記3項目をいかに工夫し患者さんに提供できるかが、活動性の維持や自宅退所率の水準に影響すると考える。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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