主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 105-
【はじめに】 当院回復期リハビリテーション病棟では、入院前の生活を早期に把握し訓練プログラムに反映させる目的で、入院前の生活が自宅であり、当院から自宅まで車で30分圏内の患者様に入院時訪問を実施している。しかし、様々な理由により入院時訪問を実施できないことが多い。また、算定期限内(入院前後7日以内)に訪問が実施できず、算定期限外に実施することもある。先行研究より、入院時訪問が入院日数の短縮やFIM運動項目の改善に関連していることが報告されているが、算定期限外の訪問が与える影響については不明である。本研究の目的は入院時訪問の有無や時期が退院時のアウトカムにどのような影響を与えるか調査することである。
【方法】 2016年4月から2020年3月に当院回復期リハビリテーション病棟を退院した脊椎圧迫骨折または大腿骨近位部骨折の患者478名のうち、受傷前の生活が自宅であり、屋内の歩行が自立(歩行補助具の使用は問わず)レベル以上かつ65歳以上でHDS-Rが10点以上の233名を対象に、入院時訪問を算定期限内に実施した群(以下、算定内群:44名 年齢の中央値は85.95歳)と入院時訪問を8日から14日以内に実施した群(以下、算定外群:15名 年齢の中央値は83.8歳)、入院時訪問を実施できなかった群(以下、非実施群:174名 年齢の中央値は84.1歳)の3群に分類した。入院日数、実績指数、FIM運動項目の改善、自宅退院割合を調査し、3群間の比較を行った。統計解析はKruskal-Wallis検定を用いて実施し、事後検定としてMann-Whitney U検定を行い、Bonferroni法で補正した。
【結果】 算定内群と非実施群においてFIM運動項目の改善に有意差を認めた。算定内群:29.5(24-34.25)点、非実施群24(16-32)点、p<0.05。その他の変数は統計学的有意差を認めなかったが、算定外群は非実施群と比較しすべての変数においてポジティブな傾向を示した。入院日数:算定外群45(37-73)日、非実施群55.5(33-70)日、実績指数:算定外群45(35.7-54.2)、非実施群42.8(29.3-64.9)、FIM運動項目の改善:算定外群26(19-31)点、非実施群24(16-32)点、自宅退院割合:算定外群93.3%、非実施群81.2%。
【考察】 算定期限内の訪問により、入院前のADLや環境等が早期に確認でき、訓練プログラムに反映させることで、FIM運動項目の改善に繋がったと考えられる。算定期限外の訪問は非実施群と比べ有意差は認めなかったが、すべての変数でポジティブな傾向を示しており、算定の期限に関わらず入院時訪問を行うことは意味があると思われる。本研究結果より、算定期限に関わらず入院時訪問の実施は重要である可能性があり、更なる追加研究が必要である。