九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題24[ 骨関節・脊髄④ ]
回復期リハビリテーション病棟における入棟時の荷重制限がある大腿骨近位部骨折術後患者の退院時歩行自立への影響
O-140 骨関節・脊髄④
金津 篤志常盤 周平
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p. 140-

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抄録

【目的】 大腿骨近位部骨折術後患者は回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)の対象疾患であり、最大90日まで入棟できる。しかし、急性期病院から回復期病院へ転院し回リハ病棟入棟時に荷重制限が設けられていることも少なくない。荷重制限によりリハビリテーションが遅延しADL向上の阻害することが予測されるが、荷重制限の影響について検討した報告は少ない。そのため、入棟時の荷重制限の有無や荷重制限の期間が退棟時の歩行自立に影響するか検討した。

【対象と方法】 2021年3月1日~2023年3月31日までに当院回リハ病棟に入棟し退棟した大腿骨近位部骨折術後患者のうち、状態悪化により回リハ病棟から転院・転棟した者、受傷前移動手段が車椅子の者、退棟まで荷重制限が継続した者を除く188例(男性34例、女性154例)とした。対象者を回リハ病棟入棟時の荷重制限の有無により、荷重制限群(32例、平均年齢80.7±12.1歳、平均在棟日数80.5±16.3日、長谷川式簡易知能評価スケール19.8±7.8点)と非制限群(156例、平均年齢83.8±8.0、平均在棟日数74.5±20.2日、長谷川式簡易知能評価スケール19.1±8.2点)の2群に分けた。評価項目は、退院時のFunctional independence measure(以下、FIM)の下位尺度である運動項目:移動(歩行)とし、6点以上の場合を歩行自立とした。さらに制限群において、歩行自立群と非自立群に分けて、全荷重までの日数を比較した。

【結果】 制限群は非制限群と比較して、歩行自立において有意差は認められなかった(Fisherの正確検定、p=0.335)。また在棟日数についても有意差はなかった(Mann-WhitneyのU検定、p=0.1026)。さらに制限群において歩行自立群13例、歩行非自立群16例で、全荷重までの日数の平均は歩行自立群21.2±10.9日、歩行非自立群42.1±31.4日(Mann-WhitneyのU検定、p=0.0214)であった。

【考察・まとめ】 回リハ病棟では90日の期限があるが、入棟時の荷重制限が退院時の歩行自立阻害因子とならないことが示唆された。しかし、全荷重許可までの期間が長くなるほど回リハ病棟入棟期間内での歩行自立が難しくなることが示唆された。今後は歩行自立を阻害する因子の追加検討を必要であると考える。

【倫理的配慮】 個人情報保護に配慮し、患者情報を診療記録から抽出し、すべて匿名化したデータを用いることで対象者に影響がないよう配慮した。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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