主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 157-
【目的】 今回、COVID-19発症後の特発性器質化肺炎の急性増悪を呈した患者に対して理学療法を行う機会を得たため、若干の考察を加え報告を行う。
【症例紹介】 80歳男性、BMI16.28、ADL自立、非喫煙者、仕事は薬局経営(登録販売員)。発熱と全身倦怠感にて体動困難となり救急搬送されCOVID-19陽性が判明。COVID-19中等症Ⅱと診断あり当院緊急入院。
【経過】 当院コロナ病棟に入院し(1病日)、NC2L/minとレムデシビルとデカドロン投与された。6病日にレントゲンにて左下肺野にすりガラス陰影認め、抗菌薬開始。10病日で服薬および抗菌薬終了。10日間の隔離期間を終了したが、器質化肺炎増悪を認め、隔離期間延長となった。12病日のCTにて背側に両側浸潤像あり、器質化肺炎増悪と判断し、PSL25㎎投与開始。計18日間の隔離期間を経て、一般病棟へ転棟。同日リハビリ開始。
25病日にレントゲンにて左気胸あり、トロッカー挿入。39病日と40病日にブラットパッチ施行し、41病日にトロッカー抜去。その後気胸の再燃なし。40病日にPSL10㎎、47病日にPSL5㎎へ減量。52病日に自宅退院。
【理学所見とアプローチ】 19病日より理学療法開始。20病日目より安静時酸素off。労作時NC2L/min使用。開始時FIM84点。両下肢筋力はMMTでFairと低下あり。安静時の呼吸苦訴えなし。労作時、歩行10mで疲労訴えあり。修正Borg scale 5でSpO2 88%への低下認めた。独歩で歩行訓練行ったためか、SpO2低下やふらつき、疲労強いため運動負荷調整行い、翌日より歩行器歩行訓練開始した。24病日、1日2回介入開始。39病日、歩行時のBorg scale5→2~3へと軽快。40病日、労作時酸素offへ。42病日、CKC訓練、バランス訓練開始。43病日、ポータブルエルゴメーター開始。45病日、自転車エルゴメーター開始。病棟内ADLは、42病日に自立。52病日に労作時SpO2 93%、FIM114点、独歩連続歩行200mで自宅退院となる。
【考察】 COVID-19は感染力が強く、介入するにあたり、医療者への感染や他患者への感染を広げることに注意が必要であった。そのため、通常の肺炎であれば早期リハビリテーション介入を行うような症例であっても介入は行われなかった。当院では、COVID-19は10日間の隔離期間が定められている。そのことから本症例は早期リハビリテーション提供困難であった。それに加え、器質化肺炎や気胸の併発があり、より一層のリハビリテーション提供の遅延と著しいADL低下を認めた。
COVID-19に対する呼吸リハビリテーションの効果は重症化に関わらず、有意に改善が得られていると報告があり、今回の症例でも、早期離床や運動療法継続により効果があったと考える。器質化肺炎や気胸の併発があったものの、早期離床や運動療法などによる呼吸リハビリテーションによって、運動耐容能の向上や呼吸困難の改善、歩行距離延長が得られたと考えられた。
【まとめ】 当院ではCOVID-19の隔離期間は10日であるが、本患者は18日間の隔離期間となり、自宅退院困難となるまでのADL低下を生み、長期入院期間を要した。COVID-19発症後であること、呼吸器リハビリテーションに基づくリハビリテーション提供ができ、自宅退院に繋げることが出来た。
【倫理に関する記述】 ヘルシンキ宣言の理念に基づき、個人情報の取り扱いに十分に配慮した。