九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題6[ 骨関節・脊髄① ]
椎体骨折における経皮的椎体形成術後と保存加療の離床期間と在院日数の比較
O-030 骨関節・脊髄①
東家 翔平宮本 健太木原 香保
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キーワード: BKP, 早期離床, 在院日数
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p. 30-

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抄録

【はじめに】 骨粗鬆症椎体骨折治療において保存加療が多く適応されているが、2011年より経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:以下、BKP)が保険適応として承認された。BKPの除痛効果は高いという報告が多くあり、ADLの低下や遅延性麻痺の予防にも有効とされている。当院においても2020年よりBKPを導入し施行例が増加しており、術後から退院までのリハビリテーションが円滑に進む症例を多く経験する。本研究は、早期離床や在院日数についてBKP施行例と保存加療例を比較検討し、BKP術後リハビリを進める上での指標を作ることを目的とする。

【方法】 対象は、2019年4月1日~2020年3月31日までに胸椎または腰椎椎体骨折と診断され保存治療を行なった入院患者(以下、保存群)と2021年4月1日~2022年3月31日までに胸椎または腰椎椎体骨折と診断されBKPを施行した入院患者(以下、BKP群)の中で杖または独歩を獲得し、自宅退院となった各30名(保存群79.4±7.4歳、男性9名、女性21名、BKP群78.8±7.3歳、男性12名、女性18名)とした。なお、その他、腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患を含むものや多椎体骨折のもの、固定術を施行したものは除外した。検討項目は、①入院日または術日から離床日(歩行や車椅子などトイレまでの移動手段の獲得に至った日)、②歩行器歩行自立までの日数、③杖または独歩自立までの日数、④在院日数とし、保存群とBKP群で比較を行った。群間比較にはMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準は5%とした。

【結果】 離床は保存群1.9±2.5日、BKP群1.0±0.2日でBKP群が有意に早かった(P<0.05)。歩行器自立は保存群5.8±6.5日、BKP群1.6±2.2日でBKP群が有意に早かった(P<0.05)。同様に杖・独歩自立も保存群16.4±12.7日、BKP群6.4±3.6日でBKP群が有意に早かった(P<0.05)。在院日数は保存群33.6±16.1日、BKP群18.2±8.2日でBKP群が有意に短かった(P<0.05)。

【考察】 BKP群の方が離床から杖または独歩自立までが早く、在院日数も短い結果となった。宇都宮らはBKP施行により術直後からVASが大きく改善したと報告している。椎体骨折では、起居動作で上半身の重量が垂直方向に加わり、骨折部に対する圧縮ストレスが増加し、疼痛出現することで動作が困難になる。BKP施行後は、骨折椎体へセメントを注入したことで圧縮ストレスに耐えうる強度を獲得でき、起居動作時痛が改善する。疼痛軽減したことで介助なしでの動作遂行が早期から可能となり、歩行器歩行自立やその後の杖・独歩自立までの期間が短くなり、階段昇降や床上動作訓練に対し、早期から介入を行うことができた。退院に必要な能力の獲得が早くなり、BKP群は保存群と比較して在院日数が短くなっていると考える。以上のことから保存加療と比較し、BKPは早期離床ができ、在院日数が短縮することで廃用症候群の予防や早期社会復帰ができる可能性が示唆された。今回の結果、離床や移動手段の獲得時期をプロトコル内で設定しやすくなり、目標達成するための機能訓練など理学療法の提供が標準化され、在院日数短縮の一助となると考えられる。

【結語】 BKPは早期離床および退院に向けた積極的な運動療法や機能訓練への早期介入に対して有効であることが示唆された。今回の反省として、当時の当院プロトコルでは初回や術前、退院時の疼痛評価やADL評価は実施していたが、術後1週毎の一定間隔で実施していなかったため、実際の疼痛変化やADL能力の比較ができなかった。現在、本研究結果の指標や疼痛・ADL評価をプロトコルに反映させ評価を定着させていきたい。

【倫理的配慮】 本研究はヘルシンキ宣言に則り、倫理委員会(承認番号23108)の承認を得ている。

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© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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