主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 37-
【Ⅰ.活動目的】 「女性の心と体はエストロゲンが守っている」と言われるが、閉経に伴いエストロゲンは急激に低下する。本邦において閉経年齢の中央値は52.1歳と報告されており、閉経前後の5年が更年期とされている。この時期に女性は様々な症状と向き合うことになるが、同時に、仕事や育児、家事、介護など多様な役割を担う。そのため、更年期障害の予防に向けた取り組みは、女性の身体的・社会的健康を維持するうえで重要と考える。
更年期障害の中でも尿失禁を経験している中高年女性は、心理的な不安を持ちながら過ごしておりQOLへの影響が問題視されている。尿失禁の予防が事前にできれば、女性のQOLの維持や向上が可能になるのではないかと考えた。
尿失禁の原因としてエストロゲンの減少や骨盤底筋群の筋力低下などが挙げられているが、近年エストロゲンに代わり、エストロゲン様の作用を行うエクオールが注目されている。エクオールは女性の約半数で産生されるとされており、エクオール産生の有無が更年期症状にも影響するとされている。このことを知り、自身の体質を知ることで運動を含めた生活環境を変容するきっかけになるのではないかと考える。また、骨盤底筋群のトレーニングが尿失禁の予防として推奨されているが、骨盤底筋群のトレーニング以前に女性の運動習慣の低さが指摘されている。そこで、今回はエクオール検査を行い自身の体質を知ることで行動変容が起きるかを調査し、加えて骨盤底筋群のトレーニングを提示することで運動の習慣を定着させ、精神面、身体面にどのような影響を及ぼすのかを調査した。この調査をもとに更年期症状を呈し始める可能性がある30代後半~50代女性に対するアプローチを模索していきたいと考えている。
【Ⅱ.活動方法】 対象は、研究の目的や方法に同意を得た30代後半~50代の女性7名とした。そのうち、出産経験のある女性は6名、出産経験のない女性は1名だった。初期評価として、エクオール値の測定と運動習慣、生活習慣に関する行動変容ステージ、更年期指数を調査した。調査方法としてGoogleフォームを用いた。
エクオール検査結果の到着後、再度アンケート調査を実施するとともに運動指導を行った。運動は骨盤底筋トレーニングを中心とした有酸素運動で1日25分程度、週に3回以上実施することを目標として提示した。具体的な実施日や実施時間に指定はなく、普段の生活の中で可能な時間に実施することとした。3か月後、アンケート調査を実施し、運動介入前後での行動変容及び身体の変化を比較する。
【Ⅲ.活動経過】 対象者7名中4名がエクオールを産生でき、3名が産生できない結果となった。検査結果を受ける前の運動に対する行動変容ステージに関しては2名「実行期」で、5名「関心期」であったが、検査結果を受けた後は「関心期」であった5名において「準備期」へと移行し運動に対する意識が高まっていた。特にエクオールを産生できなかった者に関しては、より運動などの生活習慣を改める必要があるため行動変容ステージが改善されたと考える。今後は、運動指導を継続すると同時に、運動の実施状況を確認していく。そして、3か月後、行動変容ステージ及び更年期指数等を用いて身体状況を再評価し、更年期世代の女性に対する理学療法の有用性について検討していきたい。