主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
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【目的】 本邦におけるパーキンソン病患者数の60%を75歳以上の後期高齢者が占めているとの報告がある一方で、これまでパーキンソン病に対するリハビリテーション効果を示す報告は75歳未満の前期高齢者での報告が圧倒的に多い。そのため、本研究では、後期高齢者のパーキンソン病における入院リハビリテーションの効果について明らかにすることを目的とした。
【方法】 当院にリハビリテーションを目的に入院となったパーキンソン病患者連続367例のうち他疾患による運動機能障害や心疾患などがなく、歩行可能な121例を対象とした。運動機能をUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)partⅢにてリハビリテーション介入前後で評価を行った。後方視的に前期高齢者群と後期高齢者群に分け、両群間のリハビリテーション介入前後におけるリハビリテーション効果について検証した。さらに、後期高齢者群では、UPDRS partⅢの改善値に影響を与えている下位項目について検証を行った。
【結果】 前期高齢者群(67.4±5.7歳)と後期高齢者群(79.5±3.9歳)におけるYahrの重症度分類、在院日数、リハビリテーション介入時間、抗パーキンソン病薬量、入院時UPDRS partⅢに有意差は見られなかった。両群におけるリハビリテーション実施前後のUPDRS partⅢは前期高齢者群で-4.6±6.1点(p<0.001)、後期高齢者群で-3.0±4.8点(p<0.001)と有意な改善が見られた。一方、両群間におけるリハビリテーション効果の比較では、UPDRS partⅢの改善値に有意差は見られなかった(p=0.26)。また、後期高齢者群におけるUPDRS partⅢの改善値に関連する下位項目をSpearmanの順位相関係数でみたところ運動緩慢(r=0.83, p<0.001)、軸症状(r=0.56, p<0.001)、筋強剛(r=0.45, p<0.001)の順に相関がみられた。
【考察】 本研究において両群の入院リハビリテーションは一定の効果が見られ、さらに後期高齢者群におけるリハビリテーション効果は前期高齢者群と差異がないことがわかった。この結果は、既報告同様にリハビリテーションが高齢者のパーキンソン病患者に対しても有効である可能性を示唆した。さらに、後期高齢者群のパーキンソン病患者に対するリハビリテーション効果には運動緩慢、軸症状だけでなく、筋強剛の改善も関連している可能性があることが示唆された。