九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題1[ 成人中枢神経① ]
Hoehn &Yahr 重症度分類ⅢからⅣにおける2step test と歩行およびMDS-UPDRS の関連性
O-005 成人中枢神経①
小牧 進太郎綱 翔太郎大原 円香西山 和宏上田 健一福永 誠司藤元 勇一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 5-

詳細
抄録

【はじめに】 パーキンソン病(以下、PD)は四肢の振戦や動作緩慢などの主要症状を呈す、緩徐進行性の神経変性疾患である。PD症状の進行は加齢とともに相まって立位姿勢や歩行障害の調整に大きな弊害をもたらし、Hoehn&Yahr重症度分類(以下、H&Y分類)Ⅲ以降においては姿勢反射障害や突進現象が顕著化し、転倒が増えてくると言われている為、Movement Disorder Society Unified Parkinson’s disease Rating Scale(以下、MDS-UPDRS)part3で機能障害の評価を行う事が必要である。松村らによるとMDS-UPDRSはPDによる一次性機能障害の状態を把握でき、歩行との関係性があると報告している。また、PD患者における歩行評価として10m歩行やtimed up&go test(以下、TUG)が多く報告されているが近年、より簡便な方法として2step testが用いられている。しかし、先行研究の多くは対象者がH&Y分類ⅠからⅡまでであり、歩行障害を呈しやすいH&Y分類Ⅲ以降のPD患者を対象とした報告は少ない。そこで、本研究の目的はH&Y分類ⅢからⅣのPD患者において2step testと10m歩行およびTUG、MDS-UPDRSの関連について検証した。

【対象と方法】 対象は2022年7月~2023年1月までに当院および当院の通所リハビリテーション室にてリハビリテーションを施行した9名(年齢74.8±7.4歳で男性4名、女性5名、罹病期間7.5±3.3年、H&Y分類Ⅲ:5名、Ⅳ:4名)とした。既往歴に歩行障害を伴う脳卒中を呈している者および口頭での動作指示理解が困難な者、他の神経難病の診断を受けている者は除外とした。基本情報として、カルテより年齢、性別、H&Y分類、罹病期間を抽出。歩行評価として、2step testおよび10m歩行、TUGを測定した。2step testは最大2歩幅長を身長で除し2step値を算出した。すべての測定において2度測定を行い、2step testは2step値の最大値、10m歩行およびTUGは最速値を代表値とした。MDS-UPDRS part3は下位項目である無動合計(指タッピング、手の運動、手の回内外の運動、つま先タッピング、下肢の俊敏性、運動の全般的な自発性)、固縮合計(筋強剛)、振戦合計(手の姿勢時振戦、手の運動時振戦、安静時振戦の振幅、安静時振戦の持続性)、姿勢反射障害合計(姿勢の安定性、姿勢)の主病4項目を聴取した。統計解析は、2step testと10m歩行およびTUG、MDS-UPDRS part3の下位項目の関連性をスピアマンの順位相関係数とピアソンの積率相関係数を用いて検討した。統計学的処理には、R-4.0.1を使用し、有意水準は5%とした。

【結果】 各検査項目の結果は、2step値0.56±0.49、10m歩行18.5±5.2秒、TUG22.9±10.1秒、MDS-UPDRS part3に関しては無動合計7.7±3.2点、固縮合計0.8±1.6点、振戦合計4.5±2点、姿勢反射障害合計3.7±0.9点であった。

 相関分析の結果、2step値と10m歩行(r=-0.72、p<0.05)およびTUG(r=-0.86、p<0.05)、姿勢反射合計(r=-0.84、p<0.05)との間に有意な負の相関を認めた。

【考察】 本研究の結果より、2step testと10m歩行およびTUG、MDS-UPDRS part3の姿勢反射合計との間に負の相関を認めた。先行研究同様H&Y分類Ⅲ以降においても2step testが10m歩行およびTUGと関連があると示唆された。また、先行研究によると姿勢反射障害の増大に伴い、2step値は低値を示すと報告しており、H&Y分類Ⅲ以降を対象とした本研究においても同様の結果となった。H&Y分類Ⅲ以降のPD患者は姿勢反射障害が顕著に出現しやすく、立ち直り反射が障害され2step値が低値になったのではないかと考える。今回の結果よりH&Y分類Ⅲ以降のPD患者に対する歩行評価として2step testの妥当性は高いと考えるが、PD症状の一つである姿勢反射障害の影響も考慮した上で、歩行能力の評価を行う必要性があると考える。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top