主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 59-
【はじめに】 高齢者(65歳以上)における待機的心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)術後の転帰(自宅退院、転院)に影響する因子について検討を行ったので報告する。
【方法】 2018年1月から2022年12月までの期間に当院心臓血管外科にて高齢者に対して待機的にOPCABを施行した症例のうち、入院前に自宅で生活し、歩行補助具の使用も含めて歩行が自立していた134例を対象とし、後方視的に検討を行った。
転帰(転院)を従属変数とし、術前因子(年齢、性別、GNRI、BMI、5m歩行速度、握力、フレイル、介護保険取得状況、家族による介護力の問題、BNP、左室駆出率、既往歴(心疾患、不整脈、高血圧、透析、慢性腎臓病、腎機能低下、糖尿病、脂質異常症、脳血管疾患)、Cre、eGFR、呼吸機能検査(%FVC、1秒量、1秒率)、喫煙歴)、手術関連因子(バイパス数、アプローチ方法、手術時間、麻酔時間、輸血量、出血量)、術後因子(人工呼吸器装着時間、抜管後酸素投与時間、手術前後体重差、ドレーン挿入時間、左室駆出率、SOFAスコア(ICU入室日、ICU入室翌日、ICU退室日)、合併症、リハ開始日、端座位開始日、歩行開始日、6分間歩行が可能となるまでの日数、歩行自立獲得日、集団運動療法が可能となるまでの日数)を独立変数とし、ロジスティック回帰分析を行った。なおロジスティック回帰分析を行うにあたり、まず単変量ロジスティック回帰解析を行い、p値0.1未満の変数について多変量ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とし、多重共線性に配慮して行った。
次に有意な関連性を認めた独立変数について、ROC曲線を行いカットオフ値を算出した。
【結果】 転帰に影響する因子として、年齢(OR:1.16, 95%CI:1.06-1.27, p<0.01)、歩行自立獲得日(OR:1.24, 95%CI:1.09-1.41, p<0.01)について有意差を認めた。
次にROC曲線の結果より、カットオフ値はそれぞれ年齢80歳(AUC=0.7)、歩行自立獲得日6日(AUC=0.8)であった。
【考察】 本研究では、高齢者におけるOPCAB術後の転帰に影響する因子として、年齢(80歳以上)、歩行自立獲得日(6日以上)を認めた。年齢については、心臓手術後のリハビリ進行の遅延因子や移動動作能力低下に関わる要因となるとの報告があり、本研究においても諸家の報告と同様の結果となった。また歩行自立獲得に6日以上要した際に転院となる傾向を認めたことについて、術後早期から介入し離床を進めることで、早期の歩行自立獲得、運動耐容能の改善、入院前ADLの早期獲得、そして自宅退院率向上につながるとされており、術後の治療と並行して離床を速やかに進めることで、より早く歩行自立獲得でき、自宅退院に繋げることができると思われた。
【結語】 本研究では、高齢者におけるOPCAB術後の転帰に影響する因子として、年齢(80歳以上)、歩行自立獲得日(6日以上)を認めた。これらに該当する場合は、特に術後リハビリの頻度や時間を増やし、離床を速やかに進めるとともに、必要に応じて在宅サービスの使用等の検討も入院後早期より並行して行うことで自宅退院に繋げることができると思われる。
【倫理的配慮】 本研究は当院臨床研究審査委員会の承認(承認番号:22041201)を得て、ヘルシンキ宣言に則り実施した。また、事前に対象者からデータを使用する事への同意を得た上で、個人情報保護など十分な説明を行い実施した。