九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題14[ 測定・評価② ]
デイケア・デイサービスを利用する地域在住高齢者の転倒予測に関する評価指標の検討
O-081 測定・評価②
江頭 晃板木 雅俊下江 甲作新田 博之西中川 剛
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キーワード: 地域高齢者, 転倒, 評価指標
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p. 81-

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抄録

【目的】 転倒と身体機能との関連は多くの調査で示され、様々な評価の有用性が明らかになっている。臨床では対象者特性に応じた評価が求められ、なかでもデイケア・デイサービスの評価は、時間的制約から有用性や妥当性を考慮した効率的な評価の重要性が増している。本研究では、地域高齢者を対象に複数のアウトカムを設けて、転倒予測に関する評価バッテリーを分析し、転倒予測における評価の有用性を検討した。

【方法】 デイケア1事業所、デイサービス1事業所にて調査を実施し、2022年6月から2022年12月までの期間に、運動機能評価が可能な80例の利用者を調査対象とした。対象は過去1年間の転倒歴を調査し、転倒歴があった群(転倒群)と転倒歴がなかった群(転倒無し群)に群分けした。評価項目は、問診にて疼痛評価・J-CHS・SARC-Fを調査し、身体・運動機能評価として、握力、膝伸展筋力、HDS-R、TUG、快適歩行速度、努力歩行速度、SPPB、IPSを測定した。IPSの測定はバランス訓練装置(BALANCECORDER BW-6000)を採用し、体組成の測定は体組成分析装置(In-body470)を用いた。統計解析は、転倒の有無と各評価項目との比較をマンホイットニー検定およびカイ二乗検定にて解析し、ROC曲線を用いて有用性を検討した。本研究は、調査対象者に研究の趣旨・研究方法・個人情報の保護等について文書と口頭で説明し、書面での同意を得た。

【結果】 全対象者の年齢は79.2±8.7歳、BIMは23.0±3.3であった。転倒群は23例(28%)であった。また、TUGは転倒群において15.6±7.3秒、転倒無し群において11.9±8.0秒、6mの快適歩行速度は転倒群で9.0±3.3秒、転倒無し群で6.8±4.0秒、努力歩行速度は転倒群で7.4±2.8秒、転倒無し群で5.4±2.7秒、SPPBは転倒群で8.5±2.7点、転倒無し群で10.3±2.2点、IPSは転倒群で1.0±0.6、転倒無し群で1.3±0.5、膝伸展筋力は転倒群で16.8±8.1 ㎏、転倒無し群で22.3±11.6 ㎏、握力は転倒群で23.3±8.7 ㎏、転倒無し群で28.9±13.0 ㎏, SARC-Fは転倒群で3.8±2.6点、転倒無し群で1.5±2.0点、J-CHSは転倒群で2.0±1.2点、転倒無し群で1.2±1.1点、HDS-Rは転倒群で24.3±5.8点、転倒無し群で26.5±4.0であった。転倒の有無において、快適歩行速度、努力歩行速度、TUG, SPPB, IPS, J-CHSに有意差が認められ、転倒との関連性が示唆された。ROC曲線で検討すると、努力歩行速度(AUC=0.72)、SPPB(AUC=0.69)、TUG(AUC=0.69)に有用性が示唆された。

【考察】 TUGと歩行速度は、理学療法ガイドラインにおいて高齢者の運動機能を示す指標として推奨されている。これらの指標には、機能状態の評価としての信頼性や妥当性が示され、予測の妥当性が認められている。また、村田らは134名の虚弱高齢者を調査し、TUGと歩行速度・下肢筋力との関連を示している。SPPBは牧迫らが高齢者4,328名を対象に算出方法の修正を試みた研究で、日常生活が自立している高齢者には天井効果を生じやすいが、身体機能低下がみられる者を対象とした場合には適していると報告している。よって、本研究は先行研究を裏付けており、様々な歩行と関連性がある評価をもってしても実際に歩行パフォーマンスを優先して評価することが重要であることが示された。

【まとめ】 本研究にて地域在住高齢者を対象に、転倒の有無と身体・運動機能評価との関連性を検討した。転倒の有無とTUG、努力歩行速度、SPPBの評価バッテリーに関連性が示唆され、転倒予測における評価バッテリーとして有用性が示唆された。今後は、評価の有用性を高齢者の転倒予防に活用し、予防理学療法に基づき評価効果を検討してく。

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