主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに・目的】高齢になると突発的な疾病により入院することがある。原因となった疾病や入院生活によって引き起こされる身体機能の低下などにより、退院後の生活に不安を感じる方は多い。入院時に獲得した身体機能や日常生活動作も退院後の環境で行えなければ、活動量が低下し、身体機能や活動意欲の低下につながる。活動意欲が低下することでさらに身体機能の低下を引き起こし、転倒などのリスクが高まる。 今回、訪問リハビリテーション (以下、訪問リハビリ)介入ケースにおいて、不安の軽減と目標が達成されたケースを発表する。 【症例紹介】90歳台前半、女性、要支援2。一戸建てに一人暮らし。誘因なく腰背部痛が出現し、第12胸椎に重度の不安定性を伴う新鮮な圧迫骨折を認め入院。経皮的椎体形成術を施行し、術後94日目に自宅退院。既往歴に両変形性膝関節症、高血圧症、白内障。病前は近所の公民館のカラオケ活動に週1回、20年間通われていた。 【理学療法評価】身長150.0cm、体重50kg、BMI22.2kg/m2。握力15.6kg/17.7kg、関節可動域制限は膝関節伸展-10°/-15°を認めた。Short Physical Performance Battery (以下、SPPB)はバランス4点、歩行2点、立ち上がり1点の合計7点。退院後、外出はしておらず、自宅内を慎重に移動して生活されていた。 【経過・結果】退院4日後のX日より、週1回、60分間の訪問リハビリを3ヶ月間提供。約500m離れた公民館へ行けるようになることを目標に介入。介入当初は腰痛悪化への不安があり、動くことが億劫な様子であった。自宅内の動線確認や腰痛のない動作方法の指導、腹圧を高める自主トレーニングの指導などを行った。 X+2週目に初めて屋外歩行を行い、公民館までの距離の1/3程をシルバーカーを使用して歩行した。その後、自宅前のスペースでの歩行練習を自主トレーニングに追加した。 X+6週目の訪問時に経路を確認しながら公民館に行くことができた。公民館へ行けたことが自信となり、カラオケの練習を再開された。また、同時期にカラオケ仲間による激励もあった。 X+9週目には片道8分ほどの時間で公民館へ行けるようになった。以後、訪問リハビリ非介入日に一人で公民館へ行き、週1回のカラオケ活動が再開された。 最終評価では膝関節伸展-10°/-10°、握力16.0kg/19.9kg、SPPBはバランス4点、歩行3点、立ち上がり3点の合計10点となった。 【考察】退院後に再発への不安で閉じこもりがちになっていたケースに対し、訪問リハビリの介入で不安の軽減と趣味活動が再開された。 誘因なく圧迫骨折を発症していることや長期間の入院生活であったことから、元の独居生活に戻ることに対する不安、再発に対する恐怖心があり、介入当初は自宅での生活に慣れる必要性を感じた。そのため、自宅内の動線確認や動作指導を中心に行った結果、入院時に獲得した日常生活動作が行え、独居での生活が安定した。 次に公民館までの歩行獲得については、目標が明確であり、訪問リハビリで一緒に経路を確認出来たことで安心感につながったと思われる。また、公民館へ行けたことが自信となり、自主的にカラオケの練習を再開され、入院前と同じように、週1回の趣味活動が行えるようになった。介入初期と最終のSPPBは、4m歩行は8.19秒→5.16秒、立ち上がりは23.5秒→12.8秒と改善し、下肢筋力の向上を認めた。 退院後のフォローアップとして、訪問リハビリは直接利用者の生活環境が見え、入院時に獲得した日常生活動作の確認や助言が行える。また、趣味活動や生活範囲の拡大を目的に的確なリハビリプログラムが行え、生活の質の向上を支援できると思われる。 【倫理的配慮】発表にあたり対象者へ事前に説明を行い、書面にて了承を得た。個人情報の保護、プライバシーの保護に留意した。