主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【目的】投球動作の評価はWernerによって定義された投球局面に分けて各関節角度を計測し評価することが多い.我々はAIによる投球動作解析にてフットプラント(以下FP),肩関節最大外旋 (以下MER),ボールリリース(以下BR)にて投球パフォーマンスとの関連を調査しFPでの肩外旋(以下ER)・体幹回旋 (以下TR)・骨盤回旋 (以下PR)と投球パフォーマンスが関連すると報告した.しかし投球動作は下肢から上肢へ力を伝達し効率よく投球をすることが求められるため,投球局面間の可動域の大きい選手がよりパフォーマンスが高くなり,さらに可動域が大きいことでスムーズな投球ができることで肘外反トルク(以下EV)が低くなることが予測される.本研究の目的はフットプラント (以下FP)からボールリリース (以下BR)にかける可動域と投球パフォーマンス・EVとの関連を調査することである. 【方法】対象は高校硬式野球部に所属する男子6名(平均年齢16.6±0.5歳),全例右投げだった.方法はマウンド上から18.44m先の捕手に向け全力投球を5球行った.投球パフォーマンスの測定はラプソードを用いて球速,総回転数,回転効率を算出した.EVはPULSE THROWで計測し,先行研究をもとにEV補正値(EV/身長*体重),投球効率値(EV/身長*体重*球速)を算出した.また側方からIpadを使用して動画撮影を行い, FP・MER・BRの3期のER,体幹屈曲(以下TF),TR,PRをAIソフト(Pitch AI)で算出した.統計は最も球速の速い投球を採用し,球速・総回転数・回転効率,EV補正値・投球効率値をERはFP〜MERにかける可動域,TF・TR・PRはFP〜BRにかける可動域をPearsonの相関係数を用いて検討した. 【結果】球速はTRと有意に正の相関を認めた.回転効率はER,TRと正の相関を認めた.肘外反補正値はPR・TRと有意に正の相関を認めた.投球効率値はPR・TRと有意に正の相関を認めた.総回転数は正の相関を示す傾向にあったが有意差は認めなかった. 【考察】可動性と投球パフォーマンスは正の相関を示しており,FP〜BRにかける可動範囲が大きい選手が並進運動から回転運動にかけて効率よく力を伝達でき,より高いパフォーマンスを発揮することが示唆された.矢内は骨盤が素早くかつ力強く回旋すると,投球腕のスイングが開始されるまでの短い時間内に骨盤は大きく回旋できるため,胴体全体のねじれ角は大きくなると述べており,今回の結果からFP〜BR間でのPR・TRは発揮するエネルギーの大きさを測る指標になると考える.また瀬戸口は投球側の肩外旋は股関節伸展・脊柱・胸郭の伸展,肩甲胸郭関節の後傾・上方回旋などの全身の関節の総和として実現されていると述べていることから,胴体のねじれが大きくなった結果ERも相対的に大きくなり投球パフォーマンスに寄与したと考えられる.しかしEVに関しては可動域の大きい選手で値が高い結果であり,これはエネルギー伝達が大きくなった結果かかる負荷自体が大きくなった結果と考える.そのためFPからBRにかけての動作が良好で,パフォーマンスが高い選手でも肘にかかる負荷が大きくなるため,より上肢のコンディショニングや球数増加による負荷を考慮する必要があると考える 【まとめ】FP〜BRにかけてER,TR,PRの可動性が大きくなることでパフォーマンスが高くなるが,比例して肘外反ストレスも大きくなることがあるため柔軟性等のコンディショニングと併せリハビリテーションを実施する必要があると考える. 【倫理的配慮】被験者には本研究の調査内容や起こりうる危険、不利益などを含めて説明し、また個人情報に関しては学会などで研究結果を公表する際には個人が特定できないように配慮することを説明し同意を得た。